英国政府、日米豪NZとFTA交渉を加速

(英国、オーストラリア、ニュージーランド、日本、米国)

ロンドン発

2020年02月07日

英国のエリザベス・トラス国際通商相は2月6日、議会宛ての声明で、EU以外の国々との自由貿易協定(FTA)交渉の基本方針を明らかにした。与党・保守党が2019年下院総選挙の選挙公約で示した「向こう3年間で英国の貿易総額の80%をFTAで網羅する」という目標を実現するため、EU以外の国々との通商関係強化を加速する。

交渉の優先国としては、既定の方針(2019年12月20日記事参照)どおり、米国、日本、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国を明示。これらの国々との2国間交渉が、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)加盟の足掛かりになるとの見解も示し、CPTPP加盟の意欲もあらためて示した。国際通商省は、これら4カ国とのFTAとCPTPP加盟に関する意見公募を2019年に終えている。

対米FTAについては、近日中に交渉目的を公表することも明らかにした。同交渉の優先分野としては、物品貿易やサービス貿易、投資に関する市場アクセスと適切な貿易救済措置の確立、衛生植物検疫措置に関する主権の維持、持続可能性(環境、労働、反汚職などに関する高水準の規制維持)、専門資格の相互承認、中小企業の貿易支援、デジタル貿易の促進、知的財産保護、政府調達への相互アクセス、を例示している。2月4日にボリス・ジョンソン首相が示した、EUとのFTAの交渉目的(2020年2月5日記事添付資料参照)と重なる項目も多い一方、中小企業の貿易支援などが新たに示されたかたちだ。

度々、政治問題にもされてきた(2019年6月6日記事参照)国営医療サービス(NHS)の取り扱いをめぐっては、NHSが調達する医薬品の購入価格や提供するサービスなどを一切、交渉の取引材料にはしないことを確約した。また、環境・動物保護、食品安全基準は現行の高い水準を維持し、交渉相手に妥協しない意向も示している。

難航が予想されるEUとのFTA交渉に加え、短い移行期間にこれら複数の国々と並行して英国が交渉を進められるのか、疑問視する声もある。しかし、同相は声明で「過去3年間、英国は国際機関や有力な法律事務所、企業、市民団体、政府から最高の人材を集め、世界水準の通商交渉の機能を確立してきた」と述べ、これら優先国全てと交渉を進めることに自信を示した。

ドミニク・ラーブ外相は2月6日、アジア・大洋州4カ国歴訪の最初の国となるオーストラリアを訪問。同相は出発に先立ち、声明で「英国はEUから離脱し、オーストラリアを含むインド・太平洋地域の大きなチャンスを活用するために自らの視野を広げる好機を得た」とコメントし、日豪やCPTPP加盟国との通商強化を進める意欲を示した。オーストラリアに続いて、日本、シンガポール、マレーシアを訪問する。

国際通商省は同日、移行期間終了後の英国独自の関税率の基本方針も公表し、意見公募を始めている(2020年2月7日記事参照)。

(宮崎拓)

(英国、オーストラリア、ニュージーランド、日本、米国)

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