欧州委、ブレグジットに関する「質問と回答」公表

(EU、英国)

ブリュッセル発

2020年01月27日

欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は1月24日、EU・英国間で合意した英国のEU離脱(ブレグジット)に係る協定に署名したと、それぞれ自身のツイッターに投稿した。フォン・デア・ライエン委員長は「欧州議会による批准承認(2020年1月24日記事参照)に道を開く」とコメント。また、欧州委員会は同日、「1月31日の英国のEU離脱に関わる質問と回答外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表、移行期間を含めて、ブレグジット以降に想定される状況と、その留意点などを明らかにした。

移行期間中はこれまでどおりの経済活動を保障

欧州委員会の「質問と回答」では、主に以下の内容を含む。

(1)2月1日に何が起きるのか? 移行期間とは何か?

今後、英国のEU離脱協定が1月29日に欧州議会(本会議)で、翌30日にEU理事会で承認されると、中央ヨーロッパ時間(CET)の2月1日午前0時(英国時間1月31日午後11時)に英国はEUを離脱、同時に移行期間に入る。この移行期間は少なくとも2020年12月31日まで続き、英国はEU諸機関での代表権を失うが、英国へのEU法の適用は継続することになる。この結果、移行期間中はEU・英国双方の市民や消費者、企業、投資家、学生、研究者などは、これまでどおり活動することができる。

EUと英国は移行期間中に、英国のEU離脱協定に添付される「政治宣言」に基づいて、通商協定を含む将来関係についての合意を目指す。欧州委員会は2月3日にEU・英国の将来関係に関する包括的な交渉権限付託(マンデート)指令案(2019年12月16日記事参照)を採択し、EUの一般問題理事会(閣僚理事会)でこれが採択されれば、欧州委は英国政府との正式な交渉に着手できる。

離脱協定によると、移行期間の延長は1回に限り、1年あるいは2年の期間でされるが、そのためには、6月30日までに双方で合意・決定する必要がある。なお、フォン・デア・ライエン委員長は協議日程がタイトであるとの認識(2020年1月9日記事参照)を明らかにしている。

(2)英国が移行期間中に第三国との新たな国際協定を締結できるか?

欧州委は英国による新たな国際協定の準備・策定について、手続きを進めること自体は認めるとしたが、移行期間中の発効・適用開始については、EU側の明確な承認が必要。

(3)上市された商品

欧州委は、移行期間終了後の商品サプライチェーン寸断の問題について、移行期間終了以前に上市された商品であれば、EU単一市場・英国市場での最終消費者に到達するまでの流通は、商品の変更やラベル貼り換えの必要がなければ、保証されるとの見解を示した。ただし、生きた動物や動物由来食品などについては例外的に、移行期間終了時点から、第三国からの輸入に関するEUまたは英国の法令を順守しなければならない、としている。

(4)税関的側面から見た物品の移動

通関対応や付加価値税(VAT)・物品税については、英国のEU関税同盟からの離脱以前に移動開始した商品は、EU規則に基づいてその移動を完了することを認める。VATの報告義務や払い戻しなどの権利・義務に関しては、移行期間以前に開始された越境取引は移行期間終了後もEU規則が引き続き適用される。

このほか、「質問と回答」では、「知的財産権保障」や「地理的表示(GI)保護」から「警察・司法協力」「原子力政策(EURATOM)」など広範な分野で、ブレグジットに伴う諸課題についてのEU側の見解・立場をまとめている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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