政府が「ノー・ディール」に備えるガイダンス発表
(英国)
ロンドン発
2018年08月24日
政府は8月23日、英国が合意なくEUから離脱する「ノー・ディール」に備えるガイダンスを発表した。政府はこれまでにもノー・ディールに備えた企業や一般向けの実務的な通達を準備していることを言明していた(2018年8月9日記事参照)。今回は概要文書を除くとEU基金、民間原子力分野、農業、輸出入など10分野について24文書(表参照)を発表、9月には対象分野を広げて追加で文書を発表する予定だ。
概要文書で政府は、3月にはEUとの間で、離脱後の移行期間などを定めた離脱協定に関する交渉に大きな前進がみられ(2018年3月27日記事参照)、7月12日に発表した将来関係に関する白書(2018年7月13日記事参照)を踏まえ交渉が着実に進んでいる一方、交渉がまとまらない可能性もあるため、ノー・ディールに備える必要があるとした。政府が既に着手した事項として、EU(離脱)法(2018年6月28日記事参照)などの法整備に加え、税関職員などの増員、事業環境の変化に向けた当局の権限強化などを挙げた。
ガイダンスが重視するのは、市民、消費者および企業に対する円滑なビジネス、生活インフラおよび公共サービスの運営・維持と経済への悪影響の最小化だ。各分野で離脱前からの継続性を保つための政府の関与の在り方を落とし込んだ。例えば、EUで販売承認を得た医薬品は英国内で再度認証を受ける必要がないことを保証する。ただし、全ての分野で現行の制度水準を維持するわけではなく、金融サービスはEUの枠組みから離れ、欧州経済領域(EEA)並みを目指す。また、アイルランドとの国境問題に関しては、ベルファスト合意を尊重しつつ、引き続きノー・ディールを含めたあらゆる可能性への準備を進めるとした。
政府は、今回のガイダンスは指針にすぎず、企業や市民は具体的な準備に着手する前に専門家のアドバイスが必要かどうか検討すべき、としている。
(木下裕之)
(英国)
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