EU離脱法案が両院を通過、産業界は先行き不透明に懸念

(英国)

ロンドン発

2018年06月28日

下院は6月20日、英国の「EU(離脱)法案」について上院の修正案を319対303の16票差で否決して代替の修正案を提案、その後、上院は投票を行わず下院の修正案を可決した。同法案は26日にエリザベス女王の裁可を得て成立した。

下院で否決された上院の修正案は、EUとの合意がまとまらなかった場合に議会が政府の方向性を決めるという、議会権限を強めるものだった。保守党内の親EU派の議員が造反して同修正案に賛成することが懸念されていた中、デービッド・デービスEU離脱相は、親EU派の保守党議員に対して政府のブレグジット(英国のEU離脱)交渉が決裂した場合、議員が動議を提案し議論する時間を設ける、という妥協案を提示。親EU派の保守党議員はこの政府案を受け入れ、下院の代替法案が可決された。

当地各紙の報道によると、テレーザ・メイ首相は、同法案が両院を通過したことを、円滑で秩序立ったブレグジットを実行するに当たり重要なステップになると歓迎した。また、「今後、数週間以内に、EUとの将来関係に関する英国側の提案の詳細を白書で公表する予定。貿易と関税に関する法案の下院での審議を再開する」とした。EUとの将来関係に関する白書は当初、6月28~29日に開催される欧州理事会(EU首脳会議)に先立って公表するとしていたが(2018年5月18日記事参照)、延期されていた。EU離脱に向け、議会で審議中の法案が多く残る中、今回のEU離脱法案の審議では、保守党内の意見不一致が露呈し、政府にとってはまだ予断を許さない状況が続く。

一方、産業界のブレグジット交渉に対する懸念は強くなっている。英国産業連盟(CBI)のポール・ドレスラー会長は6月21日、ブレグジットにより英国企業の数千万ポンドの投資が海外に流れているとし、ブレグジットの先行き不透明感に強い懸念を示した。大手航空機メーカーのエアバスは6月21日、EUと何の取り決めにも合意できない「ノー・ディール」シナリオのリスクアセスメント結果を公表した。ノー・ディールの場合、英国の生産に多大な混乱と中断が生じ、英国への投資を再考せざるを得ない、と英国での事業縮小を示唆している。

(鵜澤聡)

(英国)

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