英国政府、EU離脱交渉の前進を発表-産業界は歓迎、さらなる進捗求める声も-

(英国、EU)

ロンドン発

2018年03月27日

英国政府は3月19日、英国のEU離脱(ブレグジット)交渉に関して、欧州委員会との間で、EU離脱までの移行期間などを規定したポジションペーパーに合意したことを発表した。英国の産業界からは、移行期間が正式に規定されたことで、企業が懸念する不確実性が薄まることなどを歓迎する声が聞かれる一方で、将来の通商関係を定めるために、通商協定交渉へ早期に移るべきとする声もあった。

移行期間などを規定したポジションペーパーに合意

英国政府は3月19日、欧州委との間で、離脱協定のポジションペーパーに合意したことを発表した。EU離脱までの移行期間を2020年12月末までとすることなどが規定されている。

この結果を受け、英国産業連盟(CBI)のキャロリン・フェアバーン事務局長は「移行期間に関する合意は、多くの企業に対し、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を中断し、英国への投資を維持するための自信を与える重要なマイルストーンになる」とコメントした。また、「(2019年3月までの)残り1年で、今回の合意のようなブレイクスルーは、将来のパターンになる。アイルランド国境問題を含む、ブレグジットの他の課題も、同様の精神で道筋がつくられるべきだ」とし、「1年前、(英国とEUの)両者は早期の移行期間合意の可能性を排した。だが、今日合意に至った。このような歩み寄りの精神は最終合意までの厳しい選択の中でも維持されなければならない」として、今回の合意を歓迎する声明を出した。

産業界からは評価の一方で、注文のコメント

英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長は、今回の「現状維持(Status quo)」の移行期間設定の合意に関して、「英国中の多くの企業が待ち望んだマイルストーンで、(ドーバー)海峡を隔てて貿易を行う(英国とEUの)両方の企業にとって、短期的には日常業務に影響がほとんど、もしくは全くないことを意味する」として、企業への影響が小さくなることを好意的に評価する一方で、「企業は移行期間中に新たな貿易協定が合意されるかどうかに関心を向けており、その中で最優先となるのは現行の取引と同様の市場アクセスが維持されるかどうかだ」と述べた。同氏は「英国政府と欧州委員会は、貿易を行う企業が直面する調整コストを最小化し、実施に際しての疑問に答える将来の貿易関係の速やかな合意に集中すべき」とした上で、「無関税で合意できれば、頭を悩ます必要はないが、企業は関税とサービス分野での協力の双方の観点から、より現実に即した立場を取る必要がある」として、さらなる交渉の必要性を強調した。

英国経営者協会(IoD)で欧州・貿易政策を担当するアリー・レニソン氏は「移行期間の合意に関する声明を経営者は歓迎し、英国政府が産業界からの声に耳を傾け、優先事項としたことを喜ぶことだろう」とした。ただし、「詳細な条件については十分な注目が集まっておらず、懸念がある。企業は将来の貿易関係の詳細や、税関などの国内のインフラの変化を把握して初めて計画を設定できる」とコメントし、交渉がいまだ道半ばだとの見方を示した。

(木下裕之)

(英国、EU)

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