産業界は追加関税の賦課に強い懸念を表明
(米国)
ニューヨーク発
2018年04月23日
下院歳入委員会は4月12日、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課と1974年通商法301条に基づく対中輸入への関税賦課、またそれらへの中国の対抗措置(注)による米国経済・雇用への影響を議題として、公聴会を開催した。
MEMA、関税賦課は製造コスト増に
米国自動車部品工業会(MEMA)のアン・ウィルソン上級副代表(政府渉外担当)は、鉄鋼への関税賦課は製造コストの増加につながり、米国経済に有害だと述べた。また、品目別適用除外については、貿易や法律専門の人材が乏しい中小企業の負担を軽減するため手続きを簡素化すべきとし、国別適用除外については日本やスイスを含めることが望ましいとの見解を示した。その他、自動車関税の削減に関する中国政府の発表を好意的に受け止めており、今後の継続的な協議に期待すると述べた。
鉄鋼への賦課は国際競争力の低下に
インフラ関連の鉄鋼製品を製造するテキサス州のケネディ・ファブリケイティングのケビン・ケネディ社長は、鉄鋼への関税賦課は相対的に国内企業の国際競争力の低下を招くとの懸念を示した。中国からの鉄鋼輸入に際し、米国では25%の関税が賦課される一方、カナダの関税は無税のため、「わが社が国内サプライヤーから購入する価格よりも、カナダの競合企業はずっと安価に中国から鉄鋼を購入できる」と述べた。
大豆輸出に深刻な影響
米国大豆協会(ASA)のジョン・ハイスドーファ代表は米国の大豆輸出総額270億ドルのうち約62%が中国向けで、中国による大豆への追加関税は深刻な輸出の減少を招くと述べた。25%の関税が賦課された場合、中国への大豆輸出量は65%減少し、米国の大豆の総輸出量は37%減、生産は15%減少するとの米国大豆輸出協会(USSEC)の試算を示した。また、競合国のブラジルの大豆生産の拡大を念頭に、米国は中国の大豆市場のシェアを「南米に奪われる」との懸念を示した。
中国は重要な貿易パートナー
ワシントン州の港湾運送業者ノースウェスト・シーポート・アライアンスのジョン・ウォルフ代表は、中国は輸出入の両面で重要なパートナーであり、301条に対する中国の対抗措置により農家を中心に州内の経済基盤が大きな打撃を受けると述べた。例として1億2,700万ドル分が中国に輸出されているワシントン州産チェリーを挙げ、果物への15%の追加関税は深刻な問題だとの認識を示した。また、一部の果樹農家は潜在的な関税リスクと貿易を取り巻く国内のビジネス上の不安定さを懸念し、カナダの港を代替輸出港として検討していると述べた。
(注)232条への対抗措置は2018年4月2日記事、301条に対するものは2018年4月5日記事を参照。
(須貝智也)
(米国)
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