関税制度

最終更新日:2023年02月13日

管轄官庁

欧州委員会 税制・関税同盟総局

関税率問い合わせ先

欧州委員会 税制・関税同盟総局 

欧州委員会 税制・関税同盟総局 A局(Taxation and Customs Union Directorate-General, European Commission, Directorate A

関税政策、規則制定、関税率表等を担当する。
所在地:B-1049 BRUSSELS, BELGIUM

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税制・関税同盟総局:EU関税戦略 "EU Customs strategy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

EUにおける通関手続き "Customs Procedures外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

通関手続きに関わる加盟国別の問い合わせ窓口 "Perform queries on Customs Offices外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

関税体系

域内は関税無税、域外は共通関税、関税同盟・自由貿易協定などに基づく関税制度。

  1. 域内:関税は無税
  2. 域外:共通関税
    域外共通関税制度により、EU加盟国は対外的には等しく関税率を設定。
  3. 関税同盟、自由貿易協定などに基づく関税制度
    EUは、各地域、もしくは各国との個別協定に基づき関税率を設定している。
    締結済み、交渉中のFTAは、「WTO・他協定加盟状況 主な協定」を参照。

なお、EUと第三国の間で取引される物品に適用される規定や通関手続き、関税法の範囲や定義などは、関税基本法である「欧州連合関税法典(Union Customs Code:UCC、欧州議会・理事会規則952/2013)」にまとめられている。詳細は、後述の「関連法」を参照。

品目分類

合同関税品目分類表(CN)およびEU統合関税率(TARIC)

  1. 適用法令
  2. 概要
    1. 合同関税品目分類表(CN)

      EUでは、対外的な共通関税(Common Customs Tariff)の設定のため、「合同関税品目分類表(CN:Combined Nomenclature)」と呼ばれる物品の分類表を策定している。同分類に基づいた品目コード(CNコード)は、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたHS分類(1~6桁目)と、EU独自のCN下位品目分類(CN subheadings、7~8桁目)で構成される。

      理事会規則2658/87の付属書Iでは、対外的に適用される標準関税率(conventional rate)がCNコードごとに記載されている。付属書Ⅰは、欧州委員会規則によって年次改定されており、毎年10月末までに官報に掲載され、翌年1月1日から適用される。2022年に適用された関税品目分類および関税率は、欧州委員会実施規則2021/1832に定められている。また、2023年に適用される関税品目分類および関税率の改定は、欧州委員会実施規則2022/1998に定められている。

    2. EU統合関税率(TARIC)
      前記のCNに基づくEUの共通関税率や、自主的関税停止や関税割当といった貿易政策による措置、関連規定などは「EU統合関税率(TARIC:Integrated Tariff of the European Union)」と呼ばれるデータベースにまとめられている。TARICではCNコードに加え、TARIC下位分類(TARIC subheadings、9~10桁目)が設定されており、より具体的な品目を特定した上で、原産地別の関税率など関税関連の情報を掲載している。
      • 欧州委員会:EU統合関税表 "TARIC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
      • 品目別国別関税率・検索ページ(TARIC/CNベース)"TARIC Consultation外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

※拘束的関税分類情報(BTI)について
EUでは、ある産品がどの品目コードに分類されるかについて、事業者は、加盟国当局に対し拘束的関税分類情報(Binding Tariff Information:BTI)を求めることができる。BTIは原則として3年間有効で、EUのいずれの加盟国においてもBTIに従った分類を受けることができる。

関税の種類

ほとんどが従価税。

課税基準

原則的にCIF価格が基準。

CIF価格が基準となるが、現実の費用に応じて一定の調整が図られる。

課税価格は、原則的に取引価格が採用される。EUでは従来、EUへの輸出に向けて仕出国で複数の取引が行われた際、一定条件の下で、最初の取引の価格を課税価格とする「ファーストセール」制度が認められていたが、2016年5月1日の欧州連合関税法典(UCC)実施に伴い、同制度は廃止された。

詳細は、UCCおよびその関連法の該当部分を参照。

  • UCC、規則952/2013の第2部 第3章「関税目的の物品の価値」(第69~76条)
  • UCC実施規則(規則2015/2447)の「関税目的の物品の価値」(第127~146条)、「取引価格の経過規定」(第347条)
  • UCC移行委任規則(規則2016/341)の「関税目的の物品の価値」(第6条)

対日輸入適用税率

対日輸入適用税率、関税分類に関する近年の動き、関税賦課一時停止措置。

対日輸入適用税率について

日本を原産地とする製品には、EUの共通関税が適用される。
日EU経済連携協定(EPA)の原産地規則を満たし、EPA利用の申告を行った日本からの輸入品は、EPAに基づく特恵関税が適用される。なお、EU側の同EPA特恵税率は、毎年2月1日に段階的引き下げが行われる。共通関税および日EU・EPA特恵関税率は、TARICデータベースにより検索できる。

関税分類に関する近年の動き

関税分類についての適用法令・概要などについては、前述の「品目分類」を参照。

  1. 関税分類に関する近年の動き
  2. DVI端子付きLCDモニター
  3. フラット・パネル・ディスプレイ
  4. デジタル複合機
  5. セット・トップ・ボックス
  6. デジタルカメラ
  7. 携帯電話
  8. 自動車向けマルチメディアセンター

関税賦課一時停止措置

  1. 関税賦課一時停止措置
  2. 自主的関税停止

特恵等特別措置

一般特恵関税制度、特定地域への特別措置(西バルカン諸国に対する関税停止措置、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国に対する特恵措置)。

一般特恵関税制度

適用法令

2014年1月から2023年末まで、一般特恵関税制度(GSP)の適用に関する欧州議会・理事会規則978/2012による規定が適用される。

なお、GSP制度の対象国や、対象製品のリストは同規則の付属書に記載されている。各リストの掲載箇所は次のとおり。

付属書 対象国・対象製品
付属書Ⅰ GSPの有資格国(欧州委員会委任規則1421/2013により改正)
付属書Ⅱ GSPの受益国(欧州委員会委任規則1421/2013、1015/2014、1016/2014、2015/1979、2017/217、2018/148、2021/114により改正)
付属書Ⅲ 「GSPプラス」の受益国(欧州委員会委任規則1/2014、182/2014、1015/2014、1386/2014、2015/1979、2016/79、2017/836、2018/148、2021/114、2021/576により改正)
付属書Ⅳ 「武器以外のすべて(EBA)」の受益国(欧州委員会委任規則1421/2013、2015/1979、2018/148、2021/2127により改正)
付属書Ⅴ GSPの対象製品

概要

EUでは1971年以降、開発途上国に対し、一般特恵関税制度(GSP)の枠内で、貿易特恵(輸入税の免除、または軽減)という形の優遇措置を付与している。互恵性を求めないこの取決めは定期的に見直されており、当該期間に適用される規則により実施される。現行の欧州議会・理事会規則978/2012の適用期間は、2014~2023年の10年だが、後発開発途上国(LDC)への特恵措置は無期限で適用される。受益国のリストは、新たな要請や定期的な監視などを通し、適宜更新される。

一般特恵関税制度には、次の3種類がある。

  1. 標準の一般特恵制度(GSP):
    低所得国・下位中所得国・地域を対象とする標準的な特恵措置(対象国は表参照)。
  2. GSPプラス:
    持続可能な開発や人権保障などに関連する一連の国際条約を批准・準拠している低所得国・下位中所得国・地域に更なる特恵措置を付与(対象国は表参照)。
  3. 武器以外のすべて(EBA):
    後発開発途上国(LDC)を対象に、武器以外のすべての製品の輸入関税を無税とするほか、輸入割当も行わない(対象国は表参照)。

GSPの対象製品は、規則978/2012の付属書Vに記載されており、ここでは製品を「非センシティブ品目(NS)」と「センシティブ品目(S)」に区別している。非センシティブ品目は関税が完全に免除され、センシティブ品目には軽減税率が適用される。ただ、GSPプラスの受益国については、センシティブ品目であっても、一定の条件を満たせば関税が免除される。EBAの受益国については、無条件で武器以外のすべての製品の輸入関税が停止される。各制度の受益国を次に示す。

表:一般特恵関税制度の受益国
種類 国名
GSPの受益国 コンゴ共和国、クック諸島、インド、インドネシア、ケニア、ミクロネシア連邦、ナイジェリア、ニウエ、シリア、タジキスタン
GSPプラスの受益国 ボリビア、カボベルデ、キルギス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、スリランカ、ウズベキスタン
EBAの受益国 アフガニスタン、アンゴラ、バングラデシュ、ベナン、ブータン、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア*1、中央アフリカ共和国、チャド、コモロ、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ハイチ、キリバス、ラオス、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、マリ、 モーリタニア、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ニジェール、ルワンダ、サントメプリンシペ、セネガル、シエラレオネ、ソロモン諸島、ソマリア、南スーダン、スーダン、タンザニア、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、東ティモール、トーゴ、ツバル、ウガンダ、バヌアツ*2、イエメン、ザンビア

*1:特定製品の特恵扱いを2020年8月12日から一時停止
*2:2025年から対象外となる国

出所:欧州委員会委任規則1421/2013、1/2014、182/2014、1015/2014、1016/2014、1386/2014、2015/1979、2016/79、2017/217、2017/836、2018/148、2020/128、2020/550、2021/114、2021/576、2021/2127

規則978/2012の関連規則としては、GSPプラスの特恵措置付与手続きに関するルールを制定する規則(欧州委員会委任規則155/2013)や、GSP受益国の優遇措置の一時停止に関するルールとセーフガード措置の採用手続きを制定する規則(欧州委員会委任規則1083/2013)が発表されている。

また、原産地証明を行うための新たなシステム(REXシステム)が導入され、2017年1月から、順次、既存システムに取って替わっている。REXシステムの詳細内容は、UCC実施規則(2015/2447)に規定されている。これにより、GSPに関する原産地証明は、認可事業者で「登録輸出業者」として適切に本システムに登録を完了した者が、自己申告の原則に基づき実施することになる。
なお、同システムへの移行は2020年6月末までにすべての受益国で完了する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、一部の国(バングラデシュ、ベトナム、インドネシア、フィリピン等)では特例措置として最長2020年12月31日まで移行期間の延長が認められた(詳細は欧州委員会ウェブサイト「REXシステム(Registered Exporter system外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を参照)。

2020年12月末に英国のEU離脱に伴う移行期間が終了し、英国が完全にEUを離脱したこと受け、英国税関によりREXシステムに登録されていた輸出業者、英国で設立されEU加盟国税関により登録された輸出業者、加盟国で設立され加盟国税関により登録された輸出業者のうち英国EORIを有する輸出業者については2021年1月、その登録が無効となった。

[参考]ジェトロの調査レポート等

GSP改革について
GSPの原産地規則について

特定地域への特別措置

西バルカン諸国に対する関税停止措置

アフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国に対する特恵措置

欧州理事会規則2016/1076(2016年7月28日発効)により、経済パートナーシップ協定(EPA)の締結に向けて進展がみられる一部のアフリカ・カリブ海・太平洋(ACP)諸国を原産とする製品に、関税撤廃や関税割当の撤廃を含む特恵措置を適用している。付属書Iに対象国リストを、付属書IIにこれらの国を原産とする製品と規定されるための条件や各種手続きを掲載している。なお、付属書Iに記載された対象国の一部は、一般特恵関税制度(GSP)の対象国と重複している(前述「一般特恵関税制度」参照)。

表:EPAに関連した特恵措置の対象国
地域 国名
西部アフリカ コートジボワール、ガーナ
中部アフリカ カメルーン
東南部アフリカ モーリシャス、セーシェル、ジンバブエ、マダガスカル、コモロ
東アフリカ共同体 ケニア
南部アフリカ ボツワナ、エスワティニ(旧スワジランド)、ナミビア、レソト、モザンビーク
カリブ海諸国 アンティグアバーブーダ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ドミニカ、ドミニカ共和国、グレナダ、ガイアナ、ジャマイカ、スリナム、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、セントクリストファーネイビス、トリニダード・トバゴ
太平洋諸国 パプアニューギニア、フィジー、サモア、ソロモン諸島

出所:欧州理事会規則2016/1076、2017/1551、2019/821、2019/2178、2020/1138

関連法

EU関税法、免税システム

EU関税法

  1. 適用法令
  2. 概要
    ジェトロ:「EU 関税制度 関連法  EU関税法 詳細」PDFファイル(417KB)

免税システム

  1. 適用法令
    共同体関税免除制度を規定する2009年11月16日付理事会規則1186/2009(Council Regulation (EC) No 1186/2009 of 16 November 2009 setting up a Community system of reliefs from customs duty外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 概要
    ジェトロ:「EU 関税制度 関連法 免税システム 詳細」PDFファイル(179KB)

関税以外の諸税

農産物課徴金、砂糖特別賦課金、付加価値税(VAT)、物品税

その他

再輸出加工手続き、再輸入加工手続き

再輸出/再輸入を前提とし、加工・修繕を目的とする輸出入については、次のような手続きがある。適用を受けるためには、いずれの場合も事前に申請し、承認を受けることが必要である。

  1. 再輸出加工手続き
    再輸出加工(Inward Processing:IP)制度の適用を受ければ、加工処理のためにEU域外から輸入され域外へ再輸出される製品については、関税および輸入VAT、アンチダンピング関税、相殺関税等の諸税の支払いが猶予される。
  2. 再輸入加工手続き
    再輸入加工(Outward Processing:OP)制度により、域内の事業者が加工や修繕のために製品を一時的にEU域外へ輸出する場合、再輸入の際に輸入関税の減免措置の適用が可能となる。
ジェトロ:「EU 関税制度 その他 再輸出入手続き 詳細」PDFファイル(233KB)
代替原産地証明
また、EUでは、第三国から輸入した後EU域内で税関管理下にあり輸入通関前の産品を、さらに域内で分割して通関申告する特殊なケースにおいて特恵原産地証明を行う場合の手続きに関して、EU域内で分割して通関申告する産品に添付すべき原産地証明書類についても一定のルールを定めている。 具体的には、域内にさらに分割輸出される産品については、第三国から直接輸入した産品に添付する「最初の原産地証明(initial proof of origin)」に代わり、「代替原産地証明(Replacement Proofs of Origin)」を作成することを求めている。 詳細な手続きや要件については、GSPや個別のFTAの中で定められることもある。

(参考) 欧州委員会:“APPLICATION IN THE EUROPEAN UNION OF THE PROVISIONS CONCERNING REPLACEMENT PROOFS OF ORIGIN AND A.TR. MOVEMENT CERTIFICATES外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(567KB)