特集:COP27に向けて注目される中東・アフリカのグリーンビジネス 気候変動に対するスタンスの変化と広がるビジネスチャンス(中東、アフリカ)

2022年10月31日

国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、11月7日からエジプトのシャルムエル・シェイクで開催される。また、2023年にはCOP28が、アラブ首長国連邦のドバイで開催される予定だ。なぜ、世界的に見て、温室効果ガス(GHG)排出量の少ない中東アフリカ地域で気候変動の会議が開催されるのか。本稿では、気候変動に対する中東アフリカ諸国のスタンスの変化と、そこから生じるビジネスチャンスについて取り上げる。

気候変動に対するスタンスの変化

国連によると、2019年の世界のGHG排出量に占める割合は、アフリカが8.6%、中東が5.4%だ(注)。また、1850~2019年の累積排出量では、アフリカは6.7%、中東は2.4%と、両地域で構造は異なるが、世界的に見れば環境負荷の少ない地域といえる。さらに、世界の確認埋蔵量において、石油で55.5%、ガスで47.2%を占め、資源に依存するこの地域では、脱炭素の潮流は警戒すべき動きであった。

しかし、近年、中東アフリカ諸国においても、大きな変化が訪れつつある。2021年に英国・グラスゴーで開催されたCO26で、ナイジェリアのブハリ大統領は以下のとおり演説した。

「私は、ナイジェリアにおいて、喫緊の環境対策が必要であるということについて、誰も説得する必要はない。北部の砂漠化、中部での洪水、沿岸部の汚染と侵食は十分な証拠だ。ナイジェリアにとって、気候変動は将来の危機ではなく現在起こっていることだ。ナイジェリアは2060年までにネットゼロを目指す」

近年、増加する災害や環境汚染、食糧危機の頻発に、気候変動の影響を強く国民が感じるようになり、もはや先進工業国だけでなく、中東アフリカ諸国にとっても眼前の脅威となっている(2022年10月4日付ビジネス短信参照)。

また、気候変動は、中東アフリカ地域の平和と安定にも大きな影響をもたらす。ここ数年、マリやブルキナファソなどサヘル周辺国で次々と発生したクーデターの背景にも、サヘル地域で発生している干ばつの影響があるとも言われている。紛争の頻発する東アフリカのソマリアなど「アフリカの角」地域でも、干ばつによる深刻な被害が起こっている。干ばつによる飢えの拡大は、テロリストの温床となり、地域の安定化を揺るがす。

人口増加も重要な要素だ。中東アフリカ諸国は、世界で最も人口増加の著しい地域でもある。成長する人口を養うべく、より多くの食料や電力、水資源を必要とし、国境をまたいだ水資源を争う問題も発生している(2021年8月17日付地域・分析レポート参照)。

中東アフリカ諸国にとって、自国が有する化石資源を使い、二酸化炭素(CO2)を大量に排出しつつ工業化を目指すという選択肢はもはや残されておらず、経済成長と脱炭素の二兎(にと)を追う「グリーン成長」を目指すしかなくなってきているのだ。

活発化するグリーン成長への取り組み

では、どのように中東アフリカ諸国はグリーン成長を目指していくのか。短期的には、ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界的に化石燃料の需要は高まっている。しかし、脱炭素の潮流の中で、先進国からの大型の新規投資は細り、徐々に勢いを失っていくことが予想される。中東アフリカ諸国でも天然資源に恵まれた国々では、今やほぼ確実となった脱炭素の潮流を踏まえ、いかにこの新しい潮流を活用して、資源依存から脱却し、新しい産業を育てていくか、次々と野心的な戦略を打ち出している。

世界2位の産油国であるサウジアラビアは、2060年までにカーボンニュートラルを目指す方針を発表し(2021年10月25日付ビジネス短信参照)、2050年までに世界的に数千億ドル規模の市場となる水素・アンモニア分野で世界をリードすべく、試験的プロジェクトを積み重ねている。また、電力の8割を石炭火力に依存する南アフリカ共和国においては、グリーン水素のサプライチェーンの構築を目指す「水素社会ロードマップ」を発表し(2022年2月28日付ビジネス短信参照)、ドイツなどと連携しつつ、様々なプロジェクトが動き出している。競争的なコストでグリーン水素・アンモニアを生産し、世界中に輸出する計画だ。実際のところ、サウジアラビアは太陽光や風力、地価の安さなどで高い競争力を持ち、南アフリカは世界トップレベルのプラチナ埋蔵量を有するなど、こうした世界有数の資源国は、次世代エネルギーの開発においても、世界をリードしていく可能性が高い。

一方、非資源国では、再生可能エネルギーについて、一定程度のポテンシャルは有するものの、いまだ成長のための電力を量的にも、コスト的にも十分に満足のいくように供給することは難しい状況にある。しかしながら、国際開発金融機関(MDB)を中心に、気候変動分野への資金供給は増加傾向にあり、様々なプロジェクトが進行している(図1参照)。MDBの合同報告書によると、2021年の気候変動ファイナンスは、世界全体では約817億ドルで、うちサブサハラアフリカは16%(約128億ドル)、中東・北アフリカは5%(約40億ドル)であった(図2参照)。

短期的には、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻による資源価格高騰の中で、グリーン成長に向けた投資に資金が集まりにくくなっており、特に今回のCOP27は、アフリカなど途上国の気候変動に向けたファイナンスの増額が焦点となっている(2022年10月6日付ビジネス短信参照)。

図1:気候変動ファイナンス実績の推移
増加傾向にある。2021年は、中東アフリカ全体では173億ドル、サブサハラアフリカが108億ドル、中東・北アフリカが64億ドルを突破。

出所:国際開発金融機関(MDB)合同報告書からジェトロ作成

図2:ファイナンス実績(全体)2021年
世界全体で約817億ドルで、うちサブサハラアフリカはEU(37%)に次ぐ16%、北アフリカは5%を占めた。

出所:国際開発金融機関(MDB)合同報告書からジェトロ作成

広がるビジネスチャンス、適応にも可能性

こうした中東アフリカ諸国がグリーン成長に取り組む中で、日本企業にとってどのようなビジネスチャンスが考えられるだろうか。各国政府が推し進める再エネプロジェクトへの参画のほか、サウジアラビアのサウジアラムコや、南アフリカの鉱山会社など、世界有数の資源企業が脱炭素化のために進めるプロジェクトに技術面で参画したり、水素やアンモニアをオフテイクしていったりするなどの事業には大きな可能性があるだろう。

加えて、こうした各国の緩和に係るプロジェクトだけでなく、今後はより多くの適応に係るプロジェクトにも可能性があると考えらえる。MDBによるファイナンス実績を見ると、中東・北アフリカ向けでは、適応が11億ドル、緩和が29億9,000万ドルと緩和が圧倒的に大きいが、サブサハラアフリカ向けでは、適応が68億5,000万ドル、緩和が59億1,000万ドルと適応が大きくなっている(図3、4、5、6参照)。

図3:適応(サブサハラアフリカ)2021年
最も大きいのがエネルギー・交通(21.3億ドル)、続いて水・水処理(11.3億ドル)の順。

出所:国際開発金融機関(MDB)合同報告書からジェトロ作成

図4:緩和(サブサハラアフリカ)2021年
最も大きいのがエネルギー(23.9億ドル)、続いて複数分野(19.0億ドル)、農林漁業(7.0億ドル)の順。

出所:国際開発金融機関(MDB)合同報告書からジェトロ作成

図5:適応(中東・北アフリカ)2021年
最も大きいのが食料生産(2.6億ドル)、続いて複数分野(2.5億ドル)の順。

出所:国際開発金融機関(MDB)合同報告書からジェトロ作成

図6:緩和(中東・北アフリカ)2021年
最も大きいのが交通(17.3億ドル)、続いてエネルギー(4.9億ドル)、製造業(2.8億ドル)の順。

出所:国際開発金融機関(MDB)合同報告書からジェトロ作成

サブサハラアフリカ地域では、各国が推し進める再エネ導入の動きに加えて、適応分野で交通や水・水処理、食料生産など幅広いプロジェクトが今後一層進んでいくことが予想され、うまくMDBのプロジェクトに絡んでいくことがビジネスのカギとなりそうだ。

一方、中東・北アフリカ地域では、緩和では航空や海運など交通分野における次世代エネルギーの活用、適応では食料生産などのプロジェクトにMDBのファイナンス実績が集中しており、今後もこの分野でのプロジェクトが活発化していきそうだ。大型の緩和に係るプロジェクトに限らず、こうした様々な分野に目を配っていくことが日本企業にとっても重要となるだろう。


注:
国際エネルギー機関(IEA)によると、アフリカでの温室効果ガスの排出量の割合は世界全体の4%未満と推計。国際機関により推計値は異なる。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課長
佐藤 丈治(さとう じょうじ)
2001年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所、企画部企画課、ジェトロ・ラゴス事務所、ジェトロ・ロンドン事務所、展示事業部を経て、2020年4月から現職。

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