米商業用車両展示会「ACT Expo 2023」、脱炭素社会の実現に向け次世代のトラックなど公開

(米国)

ロサンゼルス発

2023年05月16日

米国のクリーン燃料を使用した商業用車両の展示会「ACT Expo 2023」が5月1~4日、カリフォルニア州のアナハイム・コンベンション・センターで開催された。主催者によると、来場者は約1万2,000人で、当初想定の8,500人を大きく超える大盛況となった。4日間にわたり150人を超える経営陣や専門家による基調講演やパネルディスカッション、ワークショップが行われ、産業トレンドやクリーン分野での投資機会、輸送における革新的な技術をテーマとしたセッションが行われた。

2011年から開催されている同展示会には自動車メーカーのみならず、クリーン燃料エンジンやトラック運送、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の充電関連設備、自動車運転技術の開発などに関する企業のほか、米国政府規制当局も出展した。米国では脱炭素化社会の実現が急がれていることから、展示会には成長するグリーンビジネスへの参入機会を求める多くの関係者が集まった。

展示会場では、新型のEVやFCV、天然ガス駆動などの大型・中型トラック紹介に加え、クレーンやリフトなどの作業用車両や通学用バスなども紹介された。中でも注目を集めていたのは、スウェーデンの自動車メーカーのボルボによるクラス8(注)の大型EVトラック「VNR」と同クラスの自動運転トラック「VNL760」の公開だった。北米におけるトラック電動化事業に関するボルボの発表によると、同社は米国とカナダで12件の顧客に250台以上のEVトラックを納入しており、さらに530台の受注があるという。一方で、充電設備の整備の遅れが、自社トラックの販売や納品の足かせになっているとし、電動化に向けた課題を指摘した。また、ドイツのダイムラー・トラックが4月に立ち上げを発表した、ネクストエラ・エナジー・リソーシズなどとの合弁企業である電力卸売事業の「グリーンレーン」も展示会に参加。同社は長距離輸送用トラック向けを中心に、全米規模で公共充電設備を整えるとされている。

FCV部門では、米国トラックメーカーであるパッカー傘下のケンワース・トラック・カンパニーとトヨタが協業でFCVトラックの開発・生産拡大を行うと発表したほか(2023年5月8日記事参照)、米国EVトラックメーカーのニコラがFCV充電設備を提供するボルテラとの協業により、2028年までに50カ所のFCV充電設備の開発を目指すと発表した。

圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas:CNG)駆動トラック部門では、米国ハイリオンがEVとCNGのハイブリット燃料システムを搭載するクラス8の大型トラック「ERX」を紹介した。同社によると、ディゼールと比べ排ガス量が少ないCNGとEVや水素燃料を組み合わせることで、充電設備が不足する地域でも走行を可能とする。ERXが搭載するEVバッテリーは、走行中に給電されるシステムのため、テキサス州~カリフォルニア州間といった約21時間の長距離走行も2回のCNG補給で済むと実証している。

日系メーカーでは、日野自動車がクラス8の大型EVトラック「Hino’s XL」を展示した。米国では2023年内に販売価格を発表し、2024年から受注開始を目指すという。また、いすゞが2025年モデルとなるクラス5のEV中型トラックを展示していたほか、トヨタの「ミライ」や日産の「リーフ」などのクリーンビークルの展示もみられた。ACT Expo 2023で紹介された新型の大型・中型トラックは添付資料表を参照。

写真 ダイムラー・トラック「eM2」(ジェトロ撮影)

ダイムラー・トラック「eM2」(ジェトロ撮影)

写真 ダイムラー・トラック「e16M」(ジェトロ撮影)

ダイムラー・トラック「e16M」(ジェトロ撮影)

写真 ハイリオンの「ERX」(ジェトロ撮影)

ハイリオンの「ERX」(ジェトロ撮影)

(サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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