組合との労働協約適法化の実施通知登録期限は5月1日に、期限に遅れると協約は無効に
(メキシコ)
メキシコ発
2023年03月09日
メキシコの連邦調停労働登録センター(CFCRL)は3月6日、連邦官報で公文書を出し、事業所が労働組合との間で2019年5月1日以前に締結した既存の労働協約の適法化(注1)の期限について、以下のとおり明らかにした。
- CFCRLへの労働協約適法化の実施通知(登録)は、2023年5月1日までに行う。
- 適法化のための労働者による投票は、2023年7月31日までに行う。
労働協約の適法化は、企業ではなく労働組合が主導して行う必要があるが、組合はCFCRLの専用ウェブサイトを通じ、適法化に向けた投票の実施を通知(注2)する必要がある。この通知が5月1日までに行われない場合、労働協約は無効になる。ただし、職場の労働者による投票は7月末までに実施すればよいことになる。
CFCRLの公文書は、国家規制改善委員会(CONAMER)のウェブサイトに2月15日に掲載され、パブリックコメントが公募されていたため、一部のマスコミで適法化プロセスの期限延長と報道されていた。しかし、労働社会保障省およびCFCRLは2月17日付でプレスリリースを出し、適法化期限の延長を認めるものではなく、適法化の実施登録は依然として5月1日までに行わなければならないことを強調した。適法化のための投票実施期限としては実質的に3カ月延長されたかたちになるが、この背景には、CFCRLにとっても期限直前の行政負担が大きく、通知内容の精査、投票の監視、協約の登録などの全ての業務を5月1日までに完了させることは困難と判断したことがあると指摘する声もある(「エル・エコノミスタ」紙2月28日)。CFCRLによると、5月1日の期限まで残り55日を切った3月8日時点でも、適法化された労働協約は1万3,468件にとどまり、合計14万件以上あるといわれる既存の労働協約の1割も適法化されていない。
組合加入は義務ではないが、外部の過激な労働組合の干渉に注意
適法化が期限内に完了しない場合、既存の労働協約は無効とされ、当該事業所には正式な労働組合が存在しないことになる。メキシコでは労働者が労働組合に加入する義務はなく、組合が存在しない事業所も数多く存在する。国立統計地理情報院(INEGI)の就業雇用調査(ENOE)によると、2022年第1四半期時点の給与労働者3,838万5,972人のうち、組合に加入しているのは486万9,045人にすぎず、給与労働者全体の12.7%にすぎない。
しかし、CFCRLに登録された労働協約が存在しない場合、外部の過激な労働組合が職場の労働者に干渉し、労働協約の締結を求めて代表権取得プロセスを開始することができ、最低でも職場の3分の1以上の労働者の指示を得て代表権を獲得した場合、新たな労働組合は今までよりも手厚い待遇や労働条件を求めてくる可能性が高い。職場の労働者や既存の労働組合との関係が良好であれば、期限までに適法化を済ませておいた方が無難で、それにより外部の過激な組合からの干渉をある程度排除することが可能になる(2019年5月7日記事参照)。
(注1)適法化とは、労働協約の内容を労働者に開示した上で、過半数以上の労働者の賛成を経て再承認するプロセスで、2019年5月1日付官報で公布された連邦労働法の改正で盛り込まれた(2019年8月5日記事参照)。
(注2)通知の際に必要な情報(組合の名称、同代表者名、雇用主の名称、労働者数とリスト、投票日など)については、CFCRLのウェブサイトに掲載されているQ&Aの10.を参照。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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