バイデン米政権、ロシア産アルミ製品の関税引き上げを含む対ロ制裁を発動
(米国、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、イラン)
ニューヨーク発
2023年02月27日
米国のバイデン政権は2月24日、ロシアがウクライナに侵攻して1年が経過したことを受けて、G7諸国と協調して新たな対ロ制裁を発動した。ウクライナへの追加支援も発表している。
制裁は大きく、(1)ロシアを支援している200以上の個人・事業体への金融制裁、(2)ロシアの防衛分野を支援している約90の事業体の輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)への掲載、(3)28億ドルに相当するロシアからの金属・鉱物・化学品、およびアルミニウム製品の輸入に対する関税の引き上げ、から成っている。(1)と(2)では、ロシア以外の第三国の主体も含まれている。(1)に関しては、財務省と国務省が「特別指定国民(SDN)」の指定を行った。例えば、財務省が指定した中には、ロシアの10大銀行の1つであるモスクワ信用銀行をはじめとする14の金融機関が含まれている。また、ロシアの金属・鉱物分野を産業別の新たな制裁対象分野に指定し、今後、財務長官と国務長官が同分野の事業体をSDNに指定できる権限を創設した。同権限の下で、金属・鉱物関連の4企業が指定されている。国務省は、ロシア政府の閣僚や地方政府の首長に加えて、国営原子力企業ロスアトムの子会社を含むエネルギーや軍事関連の事業体などを指定している。SDNには、在米資産の凍結や米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止という制裁が科される(注2)。
(2)に関して、ELとは、米国の国益に反する団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、商務省の事前許可が必要となる。今回ELに追加した事業体の大半は、「ロシアまたはベラルーシの軍事エンドユーザー」として指定した。これら事業体にEARの対象製品の輸出などを行う場合は、たとえそれらが米国外で生産された製品であっても、米国製のソフトウエア・技術を用いて生産されている場合は、商務省への事前の許可申請が必要になる。いわゆる外国直接製品(FDP)ルールが適用される。このほか商務省は、ロシアとベラルーシに限定して強化した規則の改定や、戦場で米国製品を含むイラン製ドローンが発見されていることを受けて、イラン向けの輸出管理を強化する新たな規則などを設けている。
(3)に関しては、2022年6月に230億ドル相当のロシア原産品の輸入関税率を引き上げたことに続き、2回目の措置となる(2022年6月28日記事参照)。今回は、28億ドル相当の100以上のロシア原産品につき、米東部時間4月1日午前0時01分から関税率を引き上げる。米通商代表部の声明によると、一部の金属・金属製品の関税率が70%へ、一部の化学品・鉱物の関税率が35%へ引き上げられる。さらに、1962年通商拡大法232条に基づき、(a)3月10日以降にロシア原産のアルミ製品および派生品の一部につき関税率を200%に引き上げるとともに、(b)4月10日以降はロシアで精錬・鋳造されたアルミ1次品(注3)を使用しているアルミ製品および派生品の一部に対しても関税率を200%に引き上げるとしている。ただし、(b)については、米国同様にロシア原産のアルミ製品および派生品に200%以上の関税を課す国からの輸入には適用除外になるとしている(注4)。侵攻から1年が経過してもロシアが態度を変えないことを受けて、一層踏み込んだ制裁内容となっている。
米国政府が2022年2月以降に発動した対ロシア・ベラルーシ制裁関連については、添付資料を参照。
(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(注2)また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDNに今回指定した企業などの詳細は、財務省のウェブサイトで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は、同省の「ウクライナ/ロシア関連制裁」のポータルサイトを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベースでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。
(注3)ホール・エルー法によりアルミナから電解精錬された新たなアルミニウム、と定義されている。
(注4)関税引き上げの対象となる品目の詳細については、大統領布告(アルミ製品/アルミ製品以外)が官報に掲載された際の附属書(Annex)に記載されることになる。
(磯部真一)
(米国、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、イラン)
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