米ニューヨーク市が2024年度予算案を発表、歳出は1,027億ドル、前年度比3.5%減
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月16日
米国ニューヨーク(NY)市は1月12日、2024会計年度予算案(2023年7月~2024年6月、注)を発表した。エリック・アダムス市長にとって2回目の予算編成となるが、厳しい財政状況を反映して、2年連続の前年度比マイナスの予算案となった(2022年2月22日記事参照)。
歳出総額は前年度比3.5%減の1,027億ドル、ほぼ全ての主要予算で前年度から削減されている。制服職関係予算では、悪化する治安衛生状況を踏まえて、警察や衛生関連の予算は微減にとどめる一方、消防予算は10%超の削減となっている。健康・福祉予算では、病院などへの予算が半減となっていることに加えて、ホームレス支援や保健・精神衛生も2~3割程度の削減となるなど厳しい削減が実施された。最も金額の割合が大きい教育予算は、2.2%減の320億ドルで比較的削減幅は小さかった。その他の項目では、債務返済が27.5%増の57億ドルと大幅増になっている。
歳入項目では、固定資産税が前年度比1.9%増の319億ドルとなる一方で、悪化が予想される経済環境を反映して個人所得税は2.9%減の148億ドル、法人事業税は7.4%減の48億ドルとなっている。その他、連邦政府からの補助金が23.7%減の95億ドルとなる一方、州政府からの補助金は0.8%減の169億ドルとほぼ横ばいだった(歳出歳入の詳細は添付資料表参照)。
アダムス市長は、今回の予算について「NY市が回復を続ける中、市行政は、財政規律を強く保ちながら、公共の安全、手頃な価格の住宅、衛生的な道路など、主要優先事項への投資を継続する」と述べている。
当該予算案は市議会での承認・可決が必要になるため、今後、議会での説明・交渉が行われ、7月から始まる新会計年度までの成立を目指す。NY市では、地下鉄での犯罪増加やホームレスの増加などによる治安悪化のほか(2022年12月2日記事参照)、市は路上で急増するネズミの駆除ハンターの募集を行う(地元ラジオ局WNYCによるニュースサイト「ゴッサミスト」2022年11月30日)など、衛生面の悪化も最近課題になっている。加えて、失業率は2022年11月時点で5.8%と全米平均の3.5%より高い水準にあり、12月29日から2023年1月4日までの間でNY市のオフィス占有率は最高でも5割程度にとどまるなど、新型コロナウイルス感染症流行前の活気ある状況にはいまだ戻っていない。山積みの行政課題に対処し、スムーズに予算案を実現・執行できるか、アダムス市長の手腕が問われる。
(注)NY市の予算の会計年度は、連邦政府やニューヨーク州政府と異なり、7月から翌年6月まで。
(宮野慶太)
(米国)
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