米連邦政府債務が法定上限に到達、財務省がデフォルト回避の特別措置を適用開始

(米国)

米州課

2023年01月20日

ジャネット・イエレン米国財務長官は1月19日、連邦議会上院のチャック・シューマー多数党院内総務(民主、ニューヨーク州)や下院のケビン・マッカーシー議長(共和、カリフォルニア州)ら上下院の両党リーダー4人に書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送り、同日に連邦政府債務が法定上限の31兆4,000億ドルに達したことを受け、債務不履行(デフォルト)を回避するための特別措置の適用を開始したことを明らかにした。

イエレン長官は1月13日にも、債務上限を達するとの見通しを示す書簡を上下院の両党リーダー4人に送付していた(2023年1月16日記事参照)。今回送られた書簡によると、特別措置により、公務員退職・障害基金(CSRDF)への追加投資の停止や償還、ならびに郵政公社退職者医療給付基金(PSRHBF)への追加投資の停止が行われる。また、「1月13日に送った書簡でも記したように、特別措置の継続期間は、数カ月先の連邦政府の支払いや受け取りを予測する難しさなど、かなりの不確定要素に左右される」とした上で、連邦議会に対して「米国の全面的な信用と信頼を守るために、(債務上限の引き上げまたは一時停止などを)速やかに行う」ことを要請した。

手元資金が枯渇し、米国債が発行できなくなれば、米国債はデフォルトに陥ることになる。これまで米国債がデフォルトに陥ったことはないが、オバマ政権下の2011年8月には、議会で債務上限引き上げに合意できたものの、デフォルト発生リスクを踏まえた民間格付け会社が米国債の格下げを発表し、金融市場を中心に世界経済が大きく混乱した。このような悪影響を回避するためには議会での早期対応が重要となる。

しかし現在、下院は財政規律に厳しい共和党が多数派を握っていることに加え、共和党も一枚岩とはいえず、債務上限をめぐっては2党間のみならず党内での駆け引きも予想される。この状況について、米国の大手銀行JPモルガンで最高経営責任者(CEO)を務めるジェームズ・ダイモン氏は1月19日のCNBCとのインタビューで、「米国政府の信用力が疑われてはならない。それは神聖なものだ」「(米国政府の信用力を)駆け引きの材料としてはならない」と、デフォルト発生が懸念される事態に警鐘を鳴らした。

(滝本慎一郎)

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