米国、求職者が求める留保賃金が過去最高、福利厚生を重要視の傾向
(米国)
ニューヨーク発
2022年12月26日
米国ニューヨーク連邦準備銀行(NYFED)は12月19日、求職者が就職してもよいと考える賃金水準(留保賃金)は平均年収で7万3,667ドルとなったとする調査を公表した。前回7月調査(2022年8月31日記事参照)から1.1%増加し、2014年3月の調査開始以来の最高値を更新した。
2022年11月に実施された今回の調査結果によると、男性の留保賃金が8万5,698ドルで前回から0.7%低下した一方、女性は6万1,645ドルで3.5%上昇と、男女間で伸びにやや開きがみられた。また、学歴別では、大卒以上の留保賃金は9万2,096ドルで0.1%低下し、大卒未満でも5万9,843ドルと0.4%低下した。年齢別では、45歳以下は7万9,389ドルで3.1%上昇したのに対し、45歳超では6万8,779ドルで0.1%低下した(添付資料図参照)。
また、調査において、過去4週間に仕事を探したことがあると回答した割合は18.8%と、前回7月の24.7%から大きく低下した。62歳を超えて働く可能性があると回答した割合については、前回は統計開始以来の最低の48.8%となったが、今回は48.9%と微増、また67歳を超えて働くと回答した割合も31.5%と前回31.3%から微増した。米国金融サービス会社のノースウェスタン・ミューチュアルが10月に公表した調査では、老後貯蓄の必要性や医療費上昇への懸念から、退職予定年齢が前年の調査からから1.4歳上昇し64歳となったとする結果が出ており、高インフレなどを背景に働く高齢者が将来に不安を感じている姿が浮き彫りとなった。
今回調査結果について、NYFEDでは、柔軟な勤務形態に加え、医療保険、産休、育休といった福利厚生の非賃金給付が、留保賃金上昇に与える影響が新型コロナウイルスの感染拡大前よりも高まっており、労働者にとって重要性が増している、と分析している。こうした非賃金給付については、労働者の仕事に対するモチベーションや生産性にも影響を及ぼしている。米国就職支援会社のレジュメビルダーの調査によると、米国労働者の21%が最低限の仕事のみ行っており、さらに5%は給与以下の仕事しか行っていないと回答している。労働者が仕事へのモチベーションを失っている現象は、米国では「静かな退職」と呼ばれ、こうした労働者は生産性が必然的に低くなりがちとなる。さらに、なぜ給与以上の働きをしないのかとの質問に対しては、「給料が上がらないのに労働時間を増やしたくない」(46.1%)と賃金に関する回答がトップだが、「精神的な健康が損なわれる」(45.6%)、「ワーク・ライフ・バランスが崩れる」(40.8%)、「キャリア形成に利益をもたらさない」(35.4%)といった非賃金的要素も上位となっている。両調査を踏まえれば、賃金のみならず、福利厚生などの非賃金的要素も労働者確保やモチベーションの維持・向上に重要となっているといえそうだ。
(宮野慶太)
(米国)
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