米上院超党派議員団が「IPEF交渉に議会承認が必要」、バイデン政権に議会との連携を要請
(米国)
ニューヨーク発
2022年12月05日
米国連邦議会上院の財政委員会に所属する議員21人は12月1日、ジョー・バイデン大統領に対し、政権が交渉を進めるインド太平洋経済枠組み(IPEF)の議会承認と実施に関して憲法上の懸念を表明する書簡を送付した。書簡には、同委員会のロン・ワイデン委員長(民主党、オレゴン州)やマイク・クレイポー少数党筆頭理事(共和党、アイダホ州)らが署名し、超党派の内容となっている。当該議員団は、インド太平洋地域の同盟国との関係を強化する政権の取り組みを支持する一方、IPEF交渉における議会との連携を強く求めた。
IPEFは米国が主導する経済圏構想で、正式に交渉を開始することで合意した14カ国は2022年9月に、ロサンゼルスで閣僚級会合を開催し、(1)貿易、(2)サプライチェーン、(3)クリーン経済、(4)公正な経済の4つの柱の交渉目標を設定した。12月10~15日にはオーストラリアで第1回交渉会合が行われる予定だ(2022年11月15日記事参照)。
米国の合衆国憲法は、外国との通商を規制し、関税を徴収する権限を連邦議会に与えている。一方、バイデン政権はこれまで、IPEFで関税の削減・撤廃を交渉項目に含めない方針を示しており、同枠組みについては議会の承認が不要との見方もある。しかし、議員団は書簡の中で「IPEFのように外国との通商を規制し、国際貿易の流れを再構築することを目的とした協定に、(従来の貿易協定と同様に議会の)承認が必要なのかどうかに関して誤解があるようだ」と指摘し、議会の承認は「必要だ」と言明した。行政協定を利用して、国際通商の幅広い問題に関して米国を法的に拘束しようとする試みは、憲法の下での議会の権限を妨げるだけでなく、議会の国内法制定能力を同意なく制限するものだとの懸念を伝えた。
議員団は、政権と議会がIPEFの承認・実施手続きに関して明確な立場を取っていないことを踏まえ、政権に対し3つの要求を示した。まず、IPEFの交渉過程で議会と綿密に協議するよう求めた。次に、議会をはじめ利害関係者などにも協定の潜在的影響について透明性を持って情報を提供するよう要請した。最後に、IPEFの合意内容について、議会への適切な提出、承認、実施方法に関する共通理解を得るために、議会と協力するよう要望した。米国通商代表部(USTR)は書簡に対し「バイデン政権は透明性へのコミットメントを真剣に受け止め、米国の通商政策の策定と実施において議会が果たす役割を尊重する」と述べ、今後交渉が進む中で情報共有を継続する姿勢を示している(米通商専門誌「インサイドUSトレード」12月1日)。
ワイデン、クレイポー両議員は2022年5月にも、ほかの上院議員4人と、IPEFなどに関して議会との調整不足を指摘する書簡をUSTRのキャサリン・タイ代表宛てに送付している。下院歳入委員会に所属する共和党議員8人も5月にタイ代表宛てに同様の書簡を送っており、バイデン政権が進める他国との経済協力枠組みを巡って、議会の関与を求める声が党派を超えて強まっている。
(甲斐野裕之)
(米国)
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