米商務省、中国を念頭に半導体関連の輸出管理を強化
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年10月11日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は10月7日、中国を念頭に半導体関連製品(物品・技術・ソフトウエア)の輸出管理規則(EAR)を強化する暫定最終規則(IFR)を公表した。正式には、10月13日付の官報で公示される。
BISは今回のIFRの目的について、米国政府内で、先端集積回路、スーパーコンピュータおよび半導体製造装置が、大量破壊兵器(WMD)の開発を含む軍の現代化および人権侵害に寄与する影響を検証した結果としている。また、中国政府は軍民融合戦略の実施を含め、米国の安全保障と外交的利益に反するかたちで、防衛力の現代化に莫大な資源を投入していると指摘している。BISがプレスリリースで特筆した新規則は、次のとおり。
- 規制品目リスト(CCL、注1)に、特定の先端半導体やそれらを含むコンピュータ関連の汎用(はんよう)品を追加する。
- スーパーコンピュータへの使用または中国での半導体開発もしくは生産を目的とした、特定のCCL掲載製品に対する新たな最終用途規制を導入する。
- 先端コンピューティングとスーパーコンピュータに関する2つの新たな外国直接製品ルール(FDP、注2)を導入する。
- エンティティー・リスト(EL、注3)に掲載されている在中国の事業体28社に対するFDPを拡大する。
- CCLにおける新たな輸出管理分類番号(ECCN)3B090の下に、特定の先端半導体製造装置を追加する。
- 取扱製品が、EAR 744.23条の条件を満たす半導体(注4)を製造する中国内の施設で、半導体の開発または生産に使用されることを輸出者らが認識していた場合、全てのEAR対象製品に関し許可申請を求める新たな最終用途規制を導入する。施設が中国の事業体によって所有されている場合、申請しても「原則不許可」とし、多国籍企業によって所有されている場合、「事案ごと」の審査とする。
- 米国人による特定の行動が、EAR 744.6条の条件を満たす半導体の開発または生産の支援につながる場合、許可申請が必要となる旨を公に周知する。
- 半導体製造装置および関連製品の開発または生産のための製品輸出について、許可申請を求める最終用途規制を導入する。
- 中国外での使用を目的とした特定かつ限定された活動について、サプライチェーンへの短期的な影響を最小化するため、暫定包括許可(TGL:Temporary General License、注5)を導入する。
BISはさらに、米国政府による輸出許可前の確認や出荷後の検証を十分に実施できない事業体を掲載する未検証リスト(UVL)の運用を変更する最終規則も公表した。10月13日付の官報で公示される。UVL上の事業体が所在する国の政府が、米国政府の検証に協力しない状態が60日間継続した場合、それら事業体をELに掲載し、厳しい輸出管理下に置くとしている。BISは規則の変更に合わせて、在中国の31の事業体をUVLに掲載した。輸出管理担当のアラン・エステベス商務次官は「脅威を巡る環境は常に変化しており、中国の挑戦に対応するため本日、政策を更新した。一方で、同盟・友好国への働きかけや調整も継続している」との声明を出している。
なお、BISは今回のIFRに関して、官報公示から60日間パブリックコメントを募集するとともに、米国東部時間10月13日午前9~10時に説明会を開催するとしている。
(注1)米国政府が軍事転用リスクのあるデュアルユース品目と指定した製品を掲載するリスト。製品ごとに、ECCNが振られている。詳細はBISの解説ページを参照。
(注2)米国外で生産された製品であっても、米国製の技術・ソフトウエアを用いている場合に、EARの対象として、輸出などについて事前の許可申請を求めるルール。
(注3)米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載するリスト。それら対象へ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、事前許可が必要となる。詳細はBISの解説ページを参照。
(注4)16ナノメートルまたは14ナノメートル以下のロジック半導体(FinFETまたはGAAFET)、18ナノメートルハーフピッチ以下のDRAMメモリ、128層以上のNANDフラッシュメモリが該当。
(注5)BISが指定した条件に合致する場合は、許可申請なく輸出などを継続してよいとする例外的措置。BISは、2019年に華為技術(ファーウェイ)向けにEARを強化した際、TGLを導入した経緯がある(2019年5月21日記事参照)。
(磯部真一)
(米国、中国)
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