政府、電力の安定供給に向け、原発2基の一時的な稼働延長を可能に
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2022年09月13日
ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)は9月5日、今冬の電力供給の保証について検査した「ストレステスト」の結果を踏まえ、2022年末で廃止予定だった最後の原子力発電所3基のうち、2基を2023年4月中旬まで緊急時の予備電源として稼働させる方針を発表した。一方、脱原発(注)を完了させることには変更がなく、新たな燃料は追加せず、2023年4月中旬には予備電源としての活用も終了する。2023年4月中旬以降の延長や2023、2024年の冬の再稼働はないと決定した。
ストレステストの結果によると、今冬に電力供給が危機的状況に陥る可能性は非常に低い。一方で、同可能性を完全に排除できず、電力の安定供給を強化するため、原発稼働延長という追加の対策が必要だと判断した。延長の対象の原子力発電所は、バイエルン州の「イーザル2」およびバーデン・ビュルテンベルク州の「ネッカーベストハイム2」の2基だ(添付資料図参照)。南部は北部に比べ、再生可能エネルギーによる発電量が少ないほか、産業の中心地であるため電力の需要が高い。特に、バイエルン州では他の地域よりも電力需給が緊迫している。他の代替もなく、南部の原発2基の予備電源としての活用が決定された。
ストレステストは、ドイツの送電事業者4社がBMWKの委託により、2022年3~5月および7月中旬~9月上旬にかけて2度実施した。同検査では、(1)メンテナンスなどのため停止しているフランスの原子力発電所の多くが再稼働しないこと、(2)夏季の雨不足による河川の水位低下(2022年8月26日記事参照)で、発電に必要な石炭・褐炭の船舶輸送が引き続き阻害されること、(3)ガス価格高騰のため、多くの人がガス暖房の代わりに電気ヒーターを使用することで電力需要が高まること、(4)ガス価格が1メガワット時当たり300ユーロまで上昇することなどが想定された。
なお、ドイツの複数メディアは、「イーザル2」の運営事業者であるエネルギー大手エーオンと同社子会社のプロイセン・エレクトラは、BMWKが想定している稼働は不可能だとしたと報じている。ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は9月7日、事業者側に方針が正しく理解されておらず、これまでのやり取りとも齟齬(そご)があり、もう一度話し合う予定であることを述べた。
(注)2011年3月の東京電力福島第一原発事故を受け、当時のメルケル政権が原子力法の改正を行い、同法で原子力発電による商業的な発電を2022年末で廃止すると定めた。2011年当時は国内に17基の原発が稼働中だったが、順次稼働が停止され、現在稼働中なのは3基のみ。
(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)
(ドイツ)
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