ライン川の水位低下が輸送に影響、ドイツ産業の安定供給を脅かす
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2022年08月26日
猛暑や雨不足でドイツ国内の河川の水位が大幅に低下し、船舶の航行や河川貨物輸送の障害が起きている。特にライン川は水位が低下しており、航行する船舶は貨物積載量を通常の半分以下に抑えている。
ドイツ産業連盟(BDI)は8月16日付声明で「渇水や水位低下の継続は産業界の安定供給を脅かす。既に緊迫した経済状況がさらに悪化する」と警鐘を鳴らした。さらに、「この夏に内陸水路輸送から道路・鉄道輸送へ切り替えることは、鉄道輸送のキャパシティーや新型コロナ禍、運転手不足のため難しい。現状がより長く続く場合、供給不足や生産縮小・停止、操業短縮が発生する」と続けた。また、水位低下は今後、例外ではなく頻繁に起こりうるとして、連邦政府は各州政府や物流業界、産業界とともに今後に備える必要があると加えた。
このほか、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は8月15日付声明で「内陸水路による輸送量減のため、輸送費は既に大きく上昇した」と指摘。さらに、河川の航路部分の掘削改修や船の更新に関する対策が早急に必要だとし、連邦政府が2023年に予定する、内陸水路関連予算の約3億5,000万ユーロの削減は誤ったシグナルだとした。
ケルン経済研究所(IW)の付属機関iwdが8月16日に発表した試算では、ライン川が2018年に過去最低の水位を記録した際、水位低下により経済成長が約0.4%減少し、約50億ユーロの経済的損失が発生したとされた。iwdは、同河川の水位低下が2022年も同様に内陸水運に影響した場合、2018年と同程度の経済への悪影響の可能性を予想する。
連邦水文学研究所は8月18日、今後数日間に予想される降雨による水位低下の一時的な緩和を予測しており、実際に、例えばデュッセルドルフ地点の水位は19日の30センチ台前半から24日には1メートルを超えた。
ドイツ産業における内陸水運の重要性
連邦統計局によると、2021年の内陸水路による貨物輸送量は合計1億9,509万トンだった。トラック輸送(31億797万トン)、鉄道輸送(3億5,756万トン)、海上輸送(2億8,432万トン)に比べると多くない。一方、内陸水運貨物の上位2~4位であるコークスや石油製品、石炭・褐炭と原油や天然ガス、化学製品は、それぞれ全輸送量の20.8%、27.0%、10.8%が内陸水路経由での輸送だ(添付資料表参照)。また、ロシア産天然ガス供給量の減少により、石炭・褐炭を発電燃料の代替とする予定だが、船舶の航行困難で輸送に影響を受けている。なお、ライン川は欧州域内で最も重要かつ最も交通の多い内陸水路で、ドイツの内陸水運貨物の約80%がライン川上を通る。
(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)
(ドイツ)
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