真珠養殖のビマ、ロブスターなど水産ビジネス拡大に意欲
(インドネシア)
ジャカルタ発
2022年07月14日
世界第2位の漁獲高を上げるインドネシア〔国連食糧農業機関(FAO)のデータ〕で、水産ビジネスの持続可能性や高度化に向けた取り組みが行われている。アルサリ・グループ(2022年7月11日記事参照)傘下にあるビマ・サクティ・バハリ社は、インドネシア中部の西ヌサトゥンガラ州で30年以上にわたって真珠の養殖生産を手掛けている。今後、ロブスターや海藻、ナマコなど他の水産物への事業拡大を模索する。ジェトロは7月5日、ラハユ・サラスワティ・ジョヨハディクスモ(通称:サラ)CEO(最高経営責任者)に、水産ビジネス拡大に向けた意気込みをヒアリングした。
水産ビジネスの持続可能性については、インドネシア政府としても、「やみくもに取って売る」従来の水産ビジネスから脱却し、生態系に配慮しつつ、高品質で商品価値の高いモノを売っていくビジネスを確立することを重要視してきた。ジェトロがインドネシア海洋水産省と共催した海洋漁業ミッション(2019年1月)でも、スシ・プジアストゥティ海洋水産相(当時)が持続可能な水産ビジネスの重要性を強調していた。同省は7月にも、東南アジア諸国と同ビジネスの意見交換を行っていた。
(問)水産ビジネスのポテンシャルは。
(答)インドネシアの水産ビジネスは大きな可能性を秘めている。とりわけ、領海は広大で領土の70%を占め、世界で最長の海岸線を有している。まだ発掘されておらず、持続可能な方法で漁獲できる魚や海産物が無数にあると認識している。
(問)乱獲防止など、持続可能な水産ビジネスを確立するための課題は。
(答)漁師と漁業会社双方の漁業の持続可能性に関する知識不足に加え、冷蔵・物流施設(切り身のパッキング工場など)や離島への輸送手段が最小限しかなく、西ヌサトゥンガラ州のような漁業地域でコスト高や不利益を招いていることだ。また、漁獲物を保存・輸送する最新設備(冷蔵機能付き漁船など)の不足、輸入制限・割当を含めた「漁獲物」規制の明確化や周知の不足も課題だ。さらに、領海内に侵入して国内の漁師が漁業権を有する魚を捕獲する外国の不法な漁業からインドネシアの水域と海洋生物を守る必要があることを付け加える。これらの課題解決に取り組むことで、地場企業が捕獲、生産する魚類が国内で支配的なシェアを占め、鮮度維持と輸送手段の向上により商品価値を高めることができるだろう。
(問)長年の真珠養殖ビジネスを通じて、社は地域社会にどんな取り組みをしているか。
(答)西ヌサトゥンガラ州は、残念ながら爆弾漁法で知られている。この漁法は魚やサンゴを殺し、環境に悪影響を及ぼす。しかし、当社が真珠養殖を長年続けてきた湾内には、そういうことをする漁師が近づけず、生態系は無傷のまま残り、生産性向上と持続可能性の維持につながった。私たちの養殖事業が私たちの住む場所をきれいに保つためのインセンティブとなっている。
この地域には、漁師が住む非常に小さな村がある。当社は2021年、ロブスターやナマコなど他の水産物の養殖を行うべく、事業拡大に向け新たにかじを切ったところだ。彼らに仕事を提供し、地域社会により多くの利益をもたらす企業になることを目指している。それがインドネシアの発展につながると考えている。
(問)事業拡大に向けて何をしたいか、また、日本企業に何を期待するか。
(答)当社は、インドネシアがブルーエコノミーセクター(注)の主要プレーヤーになることを望み、広大な水域を利用してロブスターやナマコなど他の水産物への事業拡大を計画している。日本は水産物を食品などさまざまな製品に利用することで有名だと認識している。当社のビジョンに向けた一歩を踏み出せるよう、(日本で持続可能性への意識が一層高まり、)日本が当社の商品を売り込む最適な市場になることを願っている。
日本企業には、技術や設備、漁業者の教育に手を貸してほしい。そして、ロブスター、ナマコ、海草の商品開発に協力するバイヤーまたは投資家を望む。製薬やバイオテクノロジーへの利用も歓迎する。
(注)ブルーエコノミーセクターとは、海を守りながら経済や社会全体を持続的に発展させることを前提とした海洋産業を指し、SDGs(持続可能な開発目標)の目標14「海の豊かさを守ろう」に貢献することが期待されている。
(佐々木新平)
(インドネシア)
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