新首都ヌサンタラ隣接地で地場企業が環境保護と事業拡大の両立にチャレンジ

(インドネシア)

ジャカルタ発

2022年07月11日

インドネシアでは、ジョコ・ウィドド大統領が発表した新首都予定地のヌサンタラ(カリマンタン島)への移転計画が2022年2月に法制化され、2045年にかけて中央政府やオフィス街、住宅地、幹線道路の開発、経済クラスターの開発が始まる予定だ。一方で、現地では、開発が環境に与える影響の大きさを指摘する声や、企業がカリマンタンに工場移転や新たな投資を行うかは未知数といった声など、懐疑的な見方もある(2022年2月28日記事参照)。

このような中、新首都近郊で自然環境を守りながら、その恵みである産品を利用した商品開発に取り組むインドネシア企業がアルサリ・グループ(ARSARI Group:注)だ。同社のラハユ・サラスワティ・ジョヨハディクスモ(通称:サラ)マネジメント代表役員に6月24日にインタビューを行った。同グループは子会社の1つイチク(PT.ITCIKU)を通じて、ヌサンタラ建設予定地(総面積25万6,142ヘクタール)に隣接する17万3,395ヘクタールの土地の利用権(concession)を有している。

写真 アルサリ・グループが管理する森林(アルサリ・グループ提供)

アルサリ・グループが管理する森林(アルサリ・グループ提供)

(問)貴社の潜在的なビジネスモデルは。

(答)現在のところ、木材製品、バイオマスエネルギーに使用する木質チップ、エッセンシャルオイル、蜂蜜、ツバメの巣などが販売可能だ。また、私たちはさまざまなバイオ燃料、焙焼(ばいしょう)バイオ石炭、有機肥料などの再生可能エネルギー製品を生産する事業開発を計画している。さらに、私たちが利用権を取得しているイチクは、新首都にきれいな水を提供できる貯水池を開発するには理想的な場所にある。当グループは森林を保護しつつ、自然の恵みを利用して持続可能かつ信頼性のある商品を開発するために尽力している。

(問)事業展開と環境保護のバランスについてどう考える。

(答)当グループは、絶滅危惧種の動物や何千もの植物が生息するバージンジャングル(人手が加わっていない森)を確保していることをお知らせしたい。私たちは再生可能エネルギーと商品を作ることにより、生態学的に持続可能なシステムを確保することに取り組んでいる。私たちの森林利用事業の全ては持続可能な森林管理関連基準を満たし、子会社のイチクは環境林業省から「パイロットプロジェクト」のステータスを授与されている。それに基づいて再生可能エネルギー事業を始めたところだ。

写真 バージンジャングル(アルサリ・グループ提供)

バージンジャングル(アルサリ・グループ提供)

写真 アルサリ・グループのオランウータン保護センター(ジェトロ撮影)

アルサリ・グループのオランウータン保護センター(ジェトロ撮影)

(問)事業拡大に向けての課題は。

(答)利用権のある土地は新首都に隣接し、ジャカルタの3倍の面積を有しているため、広大なジャングルの開発ニーズに満ちている。当グループは林業と土地管理の経験を積んできたが、さらに、さまざまな事業を成長させ、日本を含めて新しい市場にアクセスするためのパートナーを積極的に探している。ツバメの巣や蜂蜜、エッセンシャルオイルについては、商品化や工場建設といった開発の余地が多く残っている。

写真 森で取れたばかりのハチミツ(ジェトロ撮影)

森で取れたばかりのハチミツ(ジェトロ撮影)

(問)日本企業に何を期待するか。

(答)パートナーシップと投資だ。私たちは最高級のオーガニック原材料を豊富に取りそろえていると自負している。日本の知識と経験を生かすことによって、最高の商品を作ることができると信じる。また、日本はクリーンで持続可能なエネルギー製品の世界的なリーダーであり、持続可能なバイオマスエネルギー製品に対する高い需要があることも認識している。

(注)アルサリ・グループは、ハシム・ジョヨハディクスモ会長がトップを務める持ち株会社。自然製品、鉱業、再生可能エネルギー、ダム開発など幅広い事業を展開している。ハシム会長は現職のプラボウォ・スビアント国防相の実弟で、サラ代表役員の父。

(佐々木新平)

(インドネシア)

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