米上院が半導体補助金法案を可決、下院も可決の見通し
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年07月28日
米国連邦議会上院は7月27日、国内半導体産業向けの補助金を含む「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案(H.R.4346)」を64対33の賛成多数で可決した。近く下院でも可決され、ジョー・バイデン大統領の署名を経て成立する見通しだ。
CHIPSプラス法案は、中国との競争を念頭に国内の産業競争力を強化する目的で議論が続けられてきた。中核的要素は、2021年度国防授権法に含まれた、半導体産業向けインセンティブ制度のCHIPS(注)に527億ドルの予算を充当することにある。上下両院合同委員会ではそれに加えて、2020年末に失効した一般特恵関税制度(GSP)や2018年諸関税法(MTB)の復活(2020年12月25日記事参照)、1974年通商法301条に基づく中国原産品への追加関税の適用除外制度の拡大など、通商条項も付帯させるかたちでの調整が試みられていた。しかし、調整は難航し、議会の夏季休会前の成立が危ぶまれていた(2022年7月11日記事参照)。その後も、国内半導体メーカーやその声を受けたバイデン政権からの強い後押しがあり、通商条項などを削除したかたちで上院可決に至った。
法案の総額は約5年で約2,800億ドルとなり、その多くはエネルギー省や商務省、国立科学財団(NSF)、国立標準技術研究所(NIST)といった連邦政府機関の研究開発プログラムなどへの予算の充当となる。一方で、産業界向けのCHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。
- 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
- 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
- その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。
また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。
法案可決を受けて、米半導体産業協会(SIA)は「米国の経済、国家安全保障そしてカギとなる技術におけるリーダーシップの強化に向けた決定的な進展だ」との声明を出している。バイデン政権で推進役を担ったジーナ・レモンド商務長官は「共和党と民主党の上院議員は党派政治を脇に置いて、この国の安全保障のために投票した。下院でも同じことを期待する」と、下院での早期可決に期待を示した。
(注)Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors(半導体生産の支援インセンティブの創設)の頭文字を取った略称。
(磯部真一)
(米国、中国)
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