バイデン米大統領の中東訪問、米メディアには否定的な評価目立つ
(米国、イスラエル、サウジアラビア、中東、中国、ロシア)
ニューヨーク発
2022年07月19日
米国のジョー・バイデン大統領は7月13~16日に、イスラエルとサウジアラビアを訪問した。米国メディアでは、中東諸国との関係改善を図ったと評価する声もある一方で、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と面会したことや、同国から原油増産の確約を得られなかったことを取り上げて、否定的に評価する報道が目立っている。
政治紙「ポリティコ」(電子版7月16日)は、バイデン大統領の中東訪問は「ロシアと中国が影響力を拡大しようとしている中、米国もその競争に関与し、地域において大きな足掛かりをつかもうとする動きだ」とし、伝統的な同盟国との関係修復を図ったと評している(2022年7月19日記事参照)。一方で、その代償として、サウジアラビアのムハンマド皇太子と面会したことで、民主党議員からも批判を浴びた点を挙げている。バイデン政権は、2018年に起きたジャマル・カショギ記者殺害事件について、ムハンマド皇太子がこれを指示したと考えており、人権重視を掲げるバイデン大統領は6月、皇太子には会わないと発言していた。その他の主要メディアも、両者の面会を今回の中東訪問におけるハイライトの筆頭に挙げており、「ワシントン・ポスト」紙の発行人兼最高経営責任者(CEO)のフレッド・ライアン氏は「バイデン大統領とムハンマド皇太子の拳をぶつけてのあいさつは、握手よりもひどく恥ずべきことだ」との声明を出している。
バイデン大統領が今回の訪問中に、サウジアラビアから原油増産の確約を取れなかった点も、多くのメディアが報じている。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、世界的にエネルギー価格が高騰する中、米国内でもガソリン価格が史上最高値で推移している。11月に中間選挙を迎えるバイデン政権にとって、ガソリン価格の抑制は喫緊の課題の1つとなっている。金融・経済ニュース「ブルームバーグ」(7月16日)は、バイデン大統領が「今後数週間でさらなる前進を期待する」と発言したことを取り上げ、原油増産の発表が8月3日に開催されるOPECプラスの定期会合まで持ち越される可能性を報じている。また、その時点で増産が発表された場合、米国内のガソリン価格は、11月の選挙近くに下落するだろうとしている。
(磯部真一)
(米国、イスラエル、サウジアラビア、中東、中国、ロシア)
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