英財務省、金融サービスの競争力強化に向けた法案提出

(英国、EU)

ロンドン発

2022年07月29日

英国財務省は720日、議会に金融サービス・市場法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提出した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同法案は、「維持されたEU法(retained EU law)」(注1)を撤廃し、理路整然とした柔軟な制度の構築を可能にし、英国の金融サービスの競争力を高め、成長、投資を促すものとされている。

同法案の主な概要は以下のとおり。

  • 金融規制当局に対し、金融サービス事業者に対する要件設定に当たり、より大きな責任を与える。また、企業の安全性・安定性の確保や金融システムの強化など金融規制当局が持つ従来の目的に加えて、金融サービスセクターを含む英国経済の成長促進と競争力の強化を当局の副次的目的として追加する。
  • 金融規制当局の説明責任を高めるための措置を導入する。例えば公益に資する場合、政府が、金融規制当局に対し規制の見直しを指示できるようにする。
  • EUから継承した資本市場の監督規制を改正する。企業の取引の実行を規制する「第2次金融商品市場指令(MiFID II)」が定める株式取引にかかる義務や、ダークプール(注2)の取引量制限「ダブル・ボリューム・キャップ」の撤廃などが含まれる。金融行為規制機構(FCA)に対し、金融市場の透明性、効率的な機能の強化に向けて、新たな権限を付与する。
  • 一定のステーブルコイン(注3)の決済手段としての安全な採用を支援する。そのほか、新たな商品の効率性、透明性、レジリエンス向上に向けた最新技術の実証を可能にするため、金融市場インフラサンドボックス(2022年4月7日記事参照)の構築を可能にする。
  • 消費者の確実な保護に向けた取り組みを強化する。例えば、被害者自らが決済を行う「承認された支払い(Authorized Push PaymentAPP)」詐欺の被害を受けた消費者に払い戻しを行うよう金融機関に指示をする権限を、決済システム規制局(PSR)に付与する。

ナディム・ザハウィ新財務相は719日、ロンドン市長官邸「マンション・ハウス」での演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、同法案により、EU離脱による利益を享受可能だとした。同相はさらに、上場企業の資金調達に関する見直し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注4)で提案された、上場済み企業の一層の資金調達時の規制削減や、調達構造の選択肢の拡大など、全ての提案を受け入れることも併せて発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

(注1EU離脱の移行期間終了時に、英国法にそのまま置き換えられた、英国の法体系に直接組み込まれていたEU法。

(注2)金融庁によれば、電子的にアクセス可能かつ、取引前透明性のない取引の場。

(注3)特定の法定通貨と連動させるなどして、価格変動リスクを低減させた暗号資産。

(注4)財務省から202110月に委任され、マーク・オースティン氏が独立した立場で政府への推奨事項をとりまとめ2022719日に発表した報告書。

(山田恭之)

(英国、EU)

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