EU、対ロシア制裁パッケージ第6弾を採択、提案から1カ月要す

(EU、ロシア)

ブリュッセル発

2022年06月06日

EU理事会(閣僚理事会)は6月3日、ロシア産原油のEUへの輸入禁止を柱とする対ロシア制裁パッケージ第6弾を採択したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同制裁措置は、欧州委員会が5月4日に提案し、5月30~31日の欧州理事会(EU首脳会議)特別会合において政治合意に達していた(2022年6月1日記事参照)。制裁措置は3日付のEU官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公布され、即日発効したものの、提案から採択まで1カ月を要し、ロシアへのエネルギー依存に差異があるEU加盟国間での調整の難しさが浮き彫りとなった。

今回の制裁では、まず海上輸送によるロシア産原油のEUへの輸入は、スポット取引および既存契約を履行する取引は6カ月間、石油精製品については同じく8カ月間の猶予期間ののち禁止される。パイプライン経由の原油輸入は、ハンガリーの主張を受けて、禁止対象から除外された。この除外措置に期限はなく、原油のパイプライン輸送は、EU理事会が異なる決定を下すまで可能となる。その他の経過的措置として、ブルガリアは2024年末までの海上輸送によるロシア産原油と石油精製品の輸入が、またクロアチアは2023年末までのロシア産減圧軽油(VGO)の輸入が認められることとなった。さらにロシアから第三国への石油輸送に対しても、6カ月の猶予期間の後、EUの海運関連事業者が海上保険など輸送関連サービスを提供することを禁止するとした。

また、今回の制裁ではEUのこれまでの制裁パッケージ(2022年4月11日記事参照)の措置を拡大、強化する内容が盛り込まれた。金融分野では、ロシア最大手のズベルバンクのほかクレジット・バンク・オブ・モスクワ、ロシア農業銀行の3行、さらにベラルーシ開発復興銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)システムからの排除対象に追加した。またEUからロシアへの輸出禁止措置も拡大し、中でも化学兵器に使用される可能性のある化学品80品目を輸出禁止品目に追加した。軍事産業の強化につながる可能性のある二重用途物品や技術の輸出制限の対象企業・団体も拡大し、特に対ベラルーシでは制裁対象を大幅に増やした。

EU域内の資産凍結、資金提供の禁止、域内への入域禁止の対象となる個人および団体も、新興財閥(オリガルヒ)や軍・政府関係者およびその家族など65人と18団体を追加し、制裁対象者は1,158人および98団体に上ることになった。しかし、一部の制裁対象者をめぐっては、欧州理事会での政治合意後もハンガリーが難色を示したとされる。今後のさらなる制裁発動の是非についても、加盟国間の見解の相違がみられるなど、EUとしての統一した対ロシア政策の難しさが露見しつつある。

(安田啓)

(EU、ロシア)

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