EU、石炭の輸入禁止や主要銀行との取引禁止など対ロシア制裁第5弾を採択

(EU、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

ブリュッセル発

2022年04月11日

EU理事会(閣僚理事会)は4月8日、ロシアによるウクライナへの侵攻に対する第5弾となる制裁パッケージ(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を採択した。これは、3月15日に採択されたエネルギー、鉄鋼、贅沢(ぜいたく)品などに関する第4弾制裁パッケージ(2022年3月16日記事参照)に続くものだ。

EUは4月4日、ウクライナでの多数の民間人殺害などが明らかになる中で、ロシア軍の残虐行為を強く非難する声明(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。これを受けて、欧州委員会は5日、ロシアに対する新たな制裁パッケージを提案しており、今回採択された制裁パッケージは、大筋でこの提案に沿うものだ。

今回の制裁パッケージの主な内容は以下の6分野からなる。

(1)石炭の輸入禁止

ロシアからの石炭・その他の固形化石燃料のEUへの輸入、輸送の禁止(ただし、禁止措置は、移行期間を経て2022年8月から適用開始)。

(2)金融分野の措置

  • ロシアの銀行主要4行とのあらゆる取引の禁止、また同4行の資産凍結〔対象となるのは、VTBバンク、オトクリチエ、ノビコムバンク、ソフコムバンク。なお、これらの4行は既に国外送金の国際銀行間通信協会(SWIFT)システムから排除されている(2022年3月3日記事参照)〕
  • ロシアに対する高価値の暗号資産に関するサービスの提供禁止
  • ロシア富裕層への信託に関する助言サービスの提供の禁止

(3)交通運輸

  • ロシア・ベラルーシの道路輸送事業者によるEU域内での輸送禁止
  • ロシア籍船舶のEU域内の港湾へのアクセス禁止

ただし、どちらも、例外として医薬品、農産品・食料品、エネルギー、その他人道上の目的の産品などの輸送の場合は認められる。

(4)特定品目の輸出禁止

ロシアがEUに供給を強く依存する品目のロシアへの輸出禁止(対象は、ジェット燃料、量子コンピュータ、先端半導体、ソフトウエア、精密機器、輸送機器、化学品など)。

(5)輸入禁止の拡大

ロシアからの輸入禁止の対象品目の拡大(木材、ゴム製品、セメント、肥料、ウオッカを含む蒸留酒、キャビアを含む高級水産品など)。

(6)ロシア企業のEU域内の公共調達、公的支援からの排除

  • EU域内の公共調達へのロシア国籍者・ロシア企業の参加の原則禁止
  • EUや加盟国の財政などの支援プログラムからのロシア公営企業の排除
  • EU加盟国の全ての通貨を対象に、これらの通貨建ての譲渡可能証券や紙幣のロシア・ベラルーシへの販売および両国内の個人、法人への販売の禁止

また、EU理事会は同日、EU域内の資産凍結、資金提供の禁止、域内への入域禁止の対象拡大も決定。217人の個人と18の団体が新たに追加された。

なお、今回の制裁パッケージでも、一部の加盟国が求めるロシアからの天然ガスや石油の輸入禁止は盛り込まれなかったが、欧州委は、さらなる追加的な制裁を検討しているとし、その中には石油の輸入も含むとしている。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

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