米農務省、食料供給網強化に約22億ドルの拠出を発表、価格高騰への対応急ぐ
(米国)
ニューヨーク発
2022年06月07日
米国農務省は6月1日、食料供給網の強化に向けて最大で約22億ドルを拠出するフレームワークを発表した。農務省は2022年1月3日、食肉製品の価格抑制のために食品加工工場の建設などに10億ドルの金融支援を行うことを発表したほか(2022年1月13日記事参照)、5月26日には食肉加工の競争を拡大するため2億ドルの金融支援などを発表しており、バイデン政権は長期化する食料価格の高騰やウクライナ情勢による世界的な食料供給不足の懸念への対応を加速させている。
トム・ビルサック農務長官は今回のフレームワークの立ち上げについて、「新型コロナウイルスの流行によって生じた労働者の病気やその他の混乱は、食料供給網に遅滞や目詰まりを起こしたほか、ロシアによるウクライナ侵攻が農産物の価格上昇につながった」とした上で、これらの教訓を踏まえて、「米国の食品経済をより強固にする必要がある」と述べ、その意義を強調している(ロイター6月1日)。
フレームワークの主な内容としては、食肉加工工場の建設や拡張などの支援に最大3億7,500万ドルを拠出するほか、冷蔵倉庫や冷蔵用トラックなど流通、保管、集約といった能力の拡大支援に最大6億ドル、労働者の能力訓練開発に最大1億ドル、中小食品事業者支援のためのビジネスセンター開設に4億ドルを拠出するなどとしており、米国救済計画法(2021年3月16日記事参照)などに基づいて資金を手当するものとしている。
農林水産省によると、米国の食料自給率はカロリーベースで132%と、ドイツの86%やイギリスの65%などと比較すると先進国の中でも高い水準にある(いずれも2018年。なお、日本は2020年時点で37%)。しかし、品目によって差異があり、例えば、米国における油脂類の自給率は21%にとどまる。油脂類の世界シェアの9.4%をロシア、ウクライナ両国が占めるほか、肥料については、ロシアとその友好国ベラルーシが17.8%と非常に高いシェアを占めるとされる。国連食糧農業機関(FAO)が6月3日に発表した5月の食料価格指数は、ロシアとウクライナで約3割のシェアを占める小麦のほか、前述の油脂類に含まれる植物油の値上がりなどにより、前年同月比で22.8%上昇している。一方、米国労働省によると、米国の4月における食料品価格指数は前年同月比で9.4%上昇した。世界の食料価格の上昇率と比べて小さいが、その伸びは加速しており(2022年5月12日記事参照)、低所得者層を中心に家計を大きく圧迫している。11月の中間選挙を前に、バイデン政権は足元の食料価格の上昇やウクライナ情勢による食料供給懸念のほか、引き続く地政学的危機への対応を急ぐ姿勢がうかがえる。
(宮野慶太)
(米国)
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