12月の米消費者物価、前年同月比7.0%上昇、39年半ぶりの高い伸び
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月13日
米国労働省が1月12日に発表した2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.0%上昇し、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は5.5%上昇となった(添付資料図参照)。民間予想はそれぞれ7.0%、5.4%だった。各指標の前年同月比の伸びは、CPIは1982年6月以来、コア指数は1991年2月以来の最大だった。前月比でみると、消費者物価指数、コア指数はそれぞれ0.5%、0.6%上昇した。
品目別に前年同月比でみると、食料品は6.3%上昇と伸びが加速しており、家庭用食品、外食ともに伸びが高い。他方、ジョー・バイデン政権の価格抑制策などからか(2021年11月24日記事参照)、ガソリンは49.6%上昇と前月(58.1%上昇)から伸びが鈍化し、前月比では0.5%低下した。財では、中古車および中古トラックが前年同月比37.3%上昇、新車11.8%上昇と引き続き高く、財全体でも10.7%上昇と前月(9.4%上昇)より大きく伸びた。サービスは、前年同月比3.7%上昇し、前月から0.3ポイントの上昇で財に比べると小幅だが、物価全体で3割程度のウェートを占める住居費が4.1%と伸びが加速している。航空運賃は1.4%上昇し、前月のマイナスからプラスに転じたが、年末年始の休暇シーズンの割には小幅な上昇にとどまった(添付資料表参照)。
食料品の高騰に関して、バイデン政権は2022年1月3日、食肉製品の価格抑制のため10億ドルを投じて、食肉加工工場の建設などに金融支援を行うことを発表した。米国では食肉加工で大手企業の寡占が進み、上位4社で7~8割のシェアを占めているが、バイデン政権はこの寡占による価格支配が高騰の原因として問題視している。その他、農務省と司法省が違法行為の通報窓口を設けて中小企業や農畜産業者を支援するとしており、こうした政策が今後の食肉価格の低下につながるか注目される。
一方で、さらなる焦点は、加速する住居費の上昇だ。前述のとおり、住居費は毎月の家計の支払いで3割程度を占め負担になりやすく、価格交渉などを伴うことからいったん上昇すると下がりにくいという特徴を持つ。そもそもは、連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和やゼロ金利政策の下で住宅購入・投資の需要が高まり、住宅価格が上昇、タイムラグを伴って住居費も上昇しているという構図がある。この点に関し、FRBは量的緩和策の縮小(テーパリング)を既に開始しており、3月末にその終了が予定されているが、その後の政策金利引き上げは年内3回というのが連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の多数意見になっている(2021年12月17日記事参照)。バイデン大統領からFRBの次期議長に再指名されたジェローム・パウエル氏は1月11日に連邦上院銀行委員会で開かれた公聴会において、物価高が定着しないよう、政策金利の引き上げとFRBの保有資産の圧縮が必要という認識を示し、特に保有資産の圧縮については、前回2007~2009年の景気後退時に実施した時よりも早期かつ迅速に行う可能性が高いとして、今後FOMCで議論するとした。次回のFOMCは1月25~26日に開かれるが、こうした点に関してどのような議論が行われるか注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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