ライフサイエンス産業で注目の米ノースカロライナ州、日系企業視察団が訪問

(米国、日本)

アトランタ発

2022年06月30日

ジェトロは6月22~24日、米国ノースカロライナ州にライフサイエンス・製薬関連産業の視察団を派遣した。日系企業8社9人が参加し、同州中央部に位置するリサーチ・トライアングル・リージョンと呼ばれる地域を訪問した。リサーチ・トライアングル・パーク(注)を中心とするこの地域は、近年ライフサイエンス・ハブとしても知られ、日系企業の投資も増えている。投資誘致に力を入れる同州政府機関と、日系企業の海外進出を支援するジェトロが協力して視察を企画した。

総合不動産サービス会社のJLLが2021年9月に発表したライフサイエンス・クラスター市場ランキング外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、リサーチ・トライアングル・リージョン(ローリー・ダーラム)は、ボストン、サンフランシスコ・ベイエリア、サンディエゴに次ぐ全米4位のライフサイエンス産業クラスターで、特に人材に対するスコアが131.5と高く(全米の同産業クラスターの平均が100)、ボストンに次いで2位だ。

視察団が訪問した、ノースカロライナ州立大学センテニアル・キャンパス内のバイオマニュファクチャリング・トレーニング教育センター(BTEC)では、学生を対象としたプログラムに加え、ライフサイエンス業界従事者向けの専門家育成プログラムを提供している。同キャンパスには、約70の企業や政府機関が入居し、多岐にわたる分野で共同研究やインターンの受け入れなど、大学との連携が行われている。

続いて視察したウェイク工科コミュニティカレッジは、州最大のコミュニティカレッジで、7つのキャンパス、2カ所のトレーニングセンターを有する。バイオテクノロジー分野でもさまざまなプログラムが用意されており、最新の医薬品製造・品質管理基準(cGMP)を満たす模擬環境下でのバイオ医薬品を取り扱うトレーニングなどが実施されている。製薬関連企業は同カレッジを積極的に支援しており、富士フイルムや米国製薬大手イーライリリーなどがトレーニング施設整備のために寄付を行っている。

企業視察では、アステラス製薬、富士フイルム子会社のフジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ(FDB)、オーストラリア系のインフルエンザワクチン製造会社のセキラスを訪問した。アステラス製薬は2022年6月、1億ドルを投じて米国で2カ所目となる遺伝子治療薬用生産施設をノースカロライナ州に新設したばかり(2022年6月20日記事参照)。FDBは2021年3月、投資額20億ドルで同州内2カ所目となるバイオ医薬品の大型製造拠点を建設すると発表している(2021年3月23日記事参照)。視察に参加した日系企業からは「ノースカロライナ州での産学官連携を確認できた」「製薬関連分野でノースカロライナ州に工場建設や追加投資をする理由がわかった」との声が聞かれた。

(注)全米最大級のハイテクパークで、優秀な人材を輩出している全米トップレベルの研究大学3校(デューク大学、ノースカロライナ州立大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校)を結ぶ三角形の中に、1959年に設立された。

(高橋卓也)

(米国、日本)

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