米国の2021年出生数は7年ぶり増加、合計特殊出生率は1.66でわずかに上昇
(米国)
ニューヨーク発
2022年05月25日
米国疾病予防管理センター(CDC)の下部組織の国立衛生統計センター(NCHS)は5月24日、2021年の出生数が前年比1.3%増の365万9,289人となり、7年ぶりに増加、女性が生涯に産む子供の数を表す合計特殊出生率は1.66となったとの暫定値を発表した(添付資料図参照)。新型コロナウイルス禍の中で2020年は出生数、合計特殊出生率ともに6年連続で減少していた(2021年5月13日記事参照)。
出生数の前年からの増加は4万5,642人で、年齢別では、30代以上の出生数が軒並み増加した。特に30~34歳の出生数は4万3,694人増(4.1%増)、35~39歳が2万7,318人増(4.8%増)と、全体の増加に大きく寄与した。逆に、30代未満は10~14歳を除いて減少しており、特に20~24歳で1万8,090人減(2.7%減)、15~19歳で1万1,287人減(7.1%減)と、大きく落ち込んだ。人種別では、白人が4万1,122人増(2.2%増)、ヒスパニック系が1万8,013人増(2.1%増)の一方、黒人は1万2,784人減(2.4%減)、アジア系は5,512人減(2.5%減)と、人種間でばらつきが見られた。
7年ぶりに増加した米国の出生数だが、これは新型コロナ流行発生の2020年に出産を先送りにする動きがあった反動の可能性が指摘されており(ABCニュース5月24日)、出生数の水準でみても、2021年は依然として2019年のレベル(374万7,540人)を下回っている。加えて、人口維持に必要な合計特殊出生率は、死亡数が不変かつ移民ゼロの場合で2.1とされており、米国は2007年以降一貫してこれを下回っている。米国では出生数の低下を移民の流入などが補うかたちで人口が増加しているが、人口増加率も0.5%程度の低水準が続いており、特に2021年は移民の減少が大きく影響して、前年から0.1%増と建国以来最も低い伸びにとどまったとされている。移民に関連して、バイデン政権が5月23日に廃止予定だった不法移民の即時送還措置に対して裁判所から仮差し止め命令が出たことにより、同措置の延長を余儀なくされるなど、政権の移民政策には混乱が見られる。米国は高い人口成長に支えられ、先進国の中でも高い経済成長を達成してきただけに、新型コロナ流行の影響のさらなる緩和が見込まれる2023年以降に今回の出生数の増加傾向が続くか、また、移民を含めた人口増加のトレンドがどう変化するかが注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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