インドネシア、4月28日からパーム油の輸出禁止を決定
(インドネシア、マレーシア、日本)
ジャカルタ発
2022年04月27日
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は4月22日の記者会見で、同月28日からパーム油と同原材料の輸出を禁止すると発表した(大統領府ウェブサイト)。同国では食用油として広く利用されているパーム油の価格高騰や品薄の状態が続き、国民の不満が高まっている。今回の措置により国内での安定供給を目指す。一方、同国はパーム油の世界最大の生産・輸出国となっており、その影響が懸念される。同措置の詳細については24日現在、関係省庁間で調整が行われている(「CNNインドネシア」4月24日)。
インドネシア商業省の市場モニタリングシステム(SP2KP)によると、食用油1リットルの国内価格は、2021年1月が1万3,200ルピア(約119円、1ルピア=約0.009円)だったのに対し、2022年3月は1万9,400ルピアと約5割上昇している。政府はパーム油生産者に対し、輸出量のうち一定量を国内に販売する義務(DMO)を課したほか(2022年2月10日記事参照)、食用油の最高小売価格(HET)を定め、国内供給の安定化を目指してきた。しかし、輸出業者の反発を受け、DMOのほかHETの一部が3月に撤廃されていた。
スリ・ムルヤニ財務相は、食用油が国内の一般家庭には手が届かない価格になっているとした上で、今回の措置について「われわれが(パーム油を)輸出しなければ、他国に確実に影響を与えるだろう」とコメントした(「ロイター」4月24日)。グローバル・トレード・アトラスによると、インドネシアの2021年のパーム油(HS1511)輸出量は約2,553万トンで、中国向けが約425万トン、インド向けが約303万トンを占める。世界第2位のパーム油輸出国マレーシアの輸出量は1,351万トンだ。日本は両国から約63万トンを輸入しており、うち41万トンがマレーシア、22万トンがインドネシアからの輸入となっている。
世界的な影響を懸念
インドネシア経済・金融開発研究所(INDEF)のタウヒド・アフマド事務局長は「パーム油の国内消費量は年間600万~700万トンにすぎない」と指摘した上で、今回の輸出禁止措置の実効性を疑問視している。一方、「国際的なパーム原油(CPO)価格は上昇するのではないか」と予測する(「CNNインドネシア」4月24日)。
世界ではパーム油を含めた植物油の価格が上昇している。国連食糧農業機関(FAO)の発表によると、植物油の食料価格指数(2014~2016年=100)で3月は248.6を記録し、過去最高値を更新した(2022年4月11日記事参照)。
(上野渉)
(インドネシア、マレーシア、日本)
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