税関が知財侵害物品を摘発、情報登録を呼びかけ
(インドネシア)
ジャカルタ発
2022年03月09日
インドネシア税関が中国から輸入されたボールペンを商標権侵害物品(模倣品)として水際摘発していたことが分かった。知的財産総局(DJKI)が日本の特許庁と国際協力機構(JICA)、ジェトロと協力して3月1、2日に実施した日インドネシア実務者対話で同局が明らかにした。
今回の摘発物品は、2021年11月に輸入された「PT STANDARDPEN INDUSTRIES」社製のボールペンの模倣品で、過去にも同社製の模倣品が摘発されている(2020年1月14日記事参照)。このほか、米国企業ジレット製のカミソリの模倣品も摘発されている(2020年11月10日記事、添付資料参照)。
これら3件の摘発は、権利者があらかじめ税関に情報登録(Recordation)を行い、水際取り締まりの準備を行った成果だ。侵害疑義物品が輸入されると、税関は権利者に通報し、権利者は真偽を確認の上、裁判所に一時差し止めを申し立て、合同貨物検査で侵害品を摘発する。税関は実務者対話に参加した日系企業へ情報登録の活用を呼び掛けた。
税関の水際取り締まり制度では、権利者は、DJKIが発行した商標登録証の写し、商標の真正性の特徴、輸出入の権利を付与された者などの情報を税関に登録するが、それを申請できるのは「インドネシアに所在する事業体」(2018年8月29日記事参照)。
日系企業の場合、知財権は本社が管理しており、DJKIへ登録する商標の所有者は通常、日本本社だ。この場合にどういう事業体が情報登録を申請できるかについて、税関は、権利者と資本関係があり(現地法人など)、知財権の管理権限を与えられていることの証明書類(会社設立証書など)を確認の上、情報登録を認めた前例があると述べた。
また、権利者は商標の真正性を理解する調査員を指名しなければならないが、そのリソースがインドネシア国内にない企業が多い。これについて、税関は、国外にいる調査員の指名は可能と述べた。ただし、税関から通報を受けた権利者が一時差し止めを申し立てるか否かを返信する期限は2日間しかないため、知財権を熟知し、かつ迅速なコミュニケーションが可能な調査員の配置が必要と付け足した。
一時差し止め手続きには職権スキームと司法スキームの2つがあり、前者は税関が権利者の意思を確認した上で進めるのに対し、後者は権利者のイニシアチブで進める。前者の場合、権利者は、税関からの通報をきっかけに侵害の証拠や貨物の情報を集め、合同貨物検査により短期間で模倣品の有無を確認できるが、後者では、権利者が自ら証拠や情報を集めて手続きすることになるため、実務上困難とみられる。従って、実際のところ、水際取り締まりが機能するのは前者の場合に限定される。しかし、こうした水際対策を活用するための準備として、税関への情報登録は、しておいた方が良いといえそうだ。
なお、税関は実務者対話の中で、情報登録の要件の見直しを検討していることを明らかにした。権利者が情報登録をスムーズに行い、効果的な水際取り締まりにつながるよう、税関と権利者とのさらなるコミュニケーションが望まれる。
(佐々木新平)
(インドネシア)
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