米連邦政府の公的債務残高が30兆ドルに、名目GDPの約1.3倍規模
(米国)
ニューヨーク発
2022年02月03日
米国財務省が2月1日に公表したデータによると、 連邦政府の公的債務残高が1月末時点で30兆ドルに達したことが明らかになった。2021年第4四半期(10~12月)の名目GDP(年率換算)の約1.3倍の規模で、財政悪化が引き続き急速に進んでいることが浮き彫りになった。
財務省データによると、約30兆ドルのうち、国債などの連邦政府自身の債務が約23兆5,000億ドル、社会保障基金などそのほかの公的機関の債務が約6兆5,000億ドルとなっている。また、外国に対する債務は約7兆7,000億ドルあり(2021年11月時点)、そのうち、日本に対する債務が約1兆3,000億ドルと最も多く、中国の約1兆1,000億ドルが続いた。民間シンクタンクのピーター・G・ピーターソン財団(Peter G. Peterson Foundation)の2月1日の発表によると、約30兆ドルの債務は、米国の1世帯当たり23万1,000ドル、1人当たり9万ドルに相当し、米国の全ての世帯が国の債務返済のために毎月1,000ドルを拠出したとしても、完済まで19年かかるとしている。
議会予算局による2020年1月時点の中長期の財政予測では、連邦政府の債務残高が23兆ドルを超えるのは2025年と見込まれていたが、この予測よりも実績ははるかに速いペースで財政悪化が進んでいる。また、公的債務残高の上限は現在31兆4,000億ドルとなっているが(2021年12月16日記事参照)、債務上限が引き上げられた2021年12月15日時点で28兆9,000億ドルだった公的債務残高は、約1カ月半で1兆1,000億ドル増加しており、この上限に対しても速いペースで債務が積み上がっていることも懸念される。
こうした現状にもかかわらず、財政健全化の議論はあまり進んでいない。バイデン政権発足当初は「米国家族計画」に法人税率や所得税率引き上げが盛り込まれていたが、同計画がビルド・バック・ベター法案に引き継がれる過程で削除されている(2021年11月1日記事参照)。加えて、連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和策によって歴史的低水準に抑えられていた国債などの金利も、高インフレなどを背景としたFRBの金融引き締め姿勢への転換により(2022年1月27日記事参照)、足元では既に上昇の動きがみられる。債務残高増加と金利上昇が進んだ場合、利払い費の増加を通じて債務残高が膨らみ、それがまた利払い費を増加させるという悪循環に陥る可能性が懸念される。共和党のベン・サス上院議員(ネブラスカ州)は「30兆ドルの債務残高はとんでもない数字だが、さらに憂鬱(ゆううつ)なのは、(民主と共和)両党のほとんどの政治家がこれを全く気にしていないという事実だ」と述べている(FOXニュース2月1日)。財政健全化の議論が今後活発になるか注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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