米政権、3兆5,000億ドルの投資計画を半減、下院は超党派インフラ法案の採決見送り

(米国)

ニューヨーク発

2021年11月01日

米国ホワイトハウスは10月28日、民主党提案の3兆5,000億ドル規模の投資計画について、規模を半減させた「ビルド・バック・ベター」計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この投資計画については、規模などをめぐって民主党内で対立があり、計画に合意できない限り、既に上院を通過した超党派インフラ法案を下院では通過させないという党内左派議員からの主張があるなど、行き詰まりをみせていた(2021年10月5日記事参照)。直前に迫った国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)やバージニア州知事選を前に、規模を半減させても成果を急いだかたちとなった。

発表された「ビルド・バック・ベター」計画の規模は、今後10年間で1兆7,500万ドル(移民対策を除く)。家計支援や教育支援、ヘルスケア支援など、当初の大きな枠組みから変更はないが、規模縮小により幾つかの目玉政策は含んでいない。例えば、有給休暇取得支援(当初5,000億ドル)やコミュニティーカレッジ無料化(当初1,200億ドル)を現時点では含んでいないほか、ヘルスケア支援では、眼科、歯科、聴力まで拡充するとしていたメディケアが聴力までの拡充にとどまっている。また、気候変動対策では5,550億ドルを確保しており、当初と遜色ない規模だが、目玉政策だった、電力会社のクリーンエネルギーへの電源移行に補助金または罰則(移行しない場合)を科す「クリーン・エネルギー・プログラム」(当初1,500億ドル)がない。また、国境炭素措置(炭素税、2021年6月9日付地域・分析レポート参照)の導入も見送ったもようだ。

財源については、増収の柱として見込んでいた法人税率の引き上げ(21%→26.5%)や所得税率の引き上げ(37%→39.6%)が削除されており、代わって大企業に対する15%の法人最低税率や米国に拠点を置く多国籍企業の海外利益に対する15%の最低税率を課すことや、年間1,000万ドルの所得を持つ富裕層への5%の追加税率、2,500万ドルの場合にはさらに3%の追加税率を課すことなどが新たに盛り込まれている。これらの増収措置については、10年間で約2兆ドルに達するとしており、支出を十分に賄えるとしている(支出入の詳細については添付資料表参照)。

ジョー・バイデン大統領は今回の発表を受けて「私も含めて、求めるものを全て得られた人は誰もいないが、それが妥協であり、意見の一致というものだ」と述べ、民主党内の結束を訴えた。

しかし、状況はまだ流動的だ。一部の議員はヘルスケア支援などへのさらなる支出拡大を模索しているとされており、議会ではいまだに調整が続いている。今回の発表を受けて、10月末までの下院通過を目指すとしていた超党派インフラ法案も協議が整わず、10月29日現在も採決は見送られている(10月28日、CNN)。COP26や知事選を前に、両計画が近くどのような着地を見せるかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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