EU首脳、ロシアの軍事行動を厳しく非難、加盟国の結束強調

(EU、ウクライナ、ロシア)

ブリュッセル発

2022年02月17日

フランス・ストラスブールで開催されている欧州議会本会議で2月16日、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長や、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長をはじめとするEU諸機関の首脳が集い、緊迫するウクライナ情勢に関してEUのメッセージを域内外に示した(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ミシェル常任議長はロシアのリーダーに向けたメッセージとして「今ある選択肢は、戦争とそれに伴う悲惨な犠牲か、外交努力を通じた政治的な解決という勇気ある判断のどちらかだ」とし、「勇気ある判断」の選択を求めた。ロシアは過去2日間に外交的解決に応じる姿勢を示したと一定の評価は示しつつ、ロシアがウクライナ周辺で部隊を集結させている状況下で永遠に外交努力に頼ることはできないとし、もう1つの選択肢が取られる状況も視野に入れなければならないとした。その場合、2021年12月の欧州理事会でEU首脳が合意したとおり(2021年12月20日記事参照)、EUとして制裁に踏み切ることになると警告した。

フォン・デア・ライエン委員長は、ロシアがEUに対する天然ガス供給を制限することでエネルギーを「武器化」すれば、それに対処する用意があると述べた。供給制限は既に実行に移されており、それによりロシアはエネルギー供給者としての信用を損ねていると批判した。他方、協力関係にある国々からの液化天然ガスの輸入や、調達の多角化の取り組み(2022年2月9日記事参照)の結果、EUはこの冬、十分なガスエネルギーを確保できているとし、域内に冷静な対応を呼びかけた。なお、日本もEUへの液化天然ガスの融通を決定しており、フォン・デア・ライエン委員長は2月15日、岸田文雄首相との電話会談で謝意を表明している。

ジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼任)は、ロシアがEUの結束に揺さぶりをかけてきたというエピソードを紹介。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がEU27カ国にそれぞれ書簡を送ったとし、これは加盟国によって異なる回答を期待したものだが、ボレル上級代表がEUとしての統一した回答で応じたとした。ボレル上級代表は、この件が示すようにEU加盟国の結束は揺るぎないものだと強調した。ただし、今後の展開については誰も予測できないと述べ、不透明な情勢の中、引き続き外交努力を続けつつ事態の悪化にも備えるとした。

また、欧州議会は、ロベルタ・メツォラ議長をはじめ主要政党の代表が連名で、ロシアの軍事行動を非難する声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。声明では、軍事侵攻に備えてEU理事会(閣僚理事会)に対し、ロシアの国外送金〔国際銀行間通信協会(SWIFT)〕システムからの排除や、大統領側近やその家族に対するEU域内の資産凍結、入域制限を含む制裁内容を早急に固めることや、軍事侵攻の際にはロシアからドイツへ天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」プロジェクトを即時に停止することなどを要求した。

(安田啓)

(EU、ウクライナ、ロシア)

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