米商務省、半導体産業向け支援策に関するパブコメ募集を開始
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月26日
米国商務省は1月24日、国内の半導体産業の振興に向けて政府が今後稼働する可能性のある支援枠組みに関して、その設計・運用について国内外を問わず利害関係者からのコメントを募集すると官報で公示した。コメントは3月25日まで受け付けられる(注)。
バイデン政権が稼働を想定している支援枠組みは「CHIPS for America Act」だ。枠組み自体は「2021会計年度国防授権法」の一部として既に成立しているが、それに充当するための予算を含んだ法案が現在、議会で審議されている。上院は2021年6月に、同枠組み向けに520億ドルの予算を含んだ「米国イノベーション・競争法案(USICA、法案番号:S.1260)」を可決した後、下院での調整が止まっていた。しかし、政権と議会民主党が推進していたビルド・バック・ベター法案と投票権関連法案の早期成立の可能性が低下した中、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア州)は2022年1月20日、下院版のUSICAを可決し、上院可決版と調整する合同会議の開催を早期に行いたいとの姿勢を示した。半導体支援枠組みに関する該当部分が上院版USICAの内容のまま通った場合、法案成立から5年間において、(1)390億ドルを米国内での半導体製造・組み立て・試験・先端パッケージ・研究開発施設の建設・現代化の支援に、(2)112億ドルを国家半導体技術センター(NSTC)の創設などを含む研究開発およびインフラ投資への支援に拠出することになっている。
法案成立に向け、米国内の半導体関連産業が政権・議会に対して、支援枠組みの早期実現を求めていた。最終的には議会での法案成立が必要となるため、2021年後半から政権内で商務省が中心になって議会に働き掛けを行っていた。商務省は2022年1月25日、2021年秋に関連業界から提供を受けた半導体サプライチェーン上のリスクに関する情報(2021年9月27日記事参照)をまとめた報告書を発表し、その結果も議会がUSICAを早期に成立させる必要があることを示しているとの声明を出した。具体的には、半導体消費者(自動車メーカーなど)における在庫の中央値が、2019年に40日分だったのが2021年には5日分未満に減っており、今後、自然災害などで国外の半導体施設が数週間でも閉鎖されれば、米国内の(半導体消費者の)製造施設も閉鎖しなければならない可能性があるといった点を指摘している。ジョー・バイデン大統領自身も、インテルによるオハイオ州での新工場建設(2022年1月24日記事参照)にかかる会見時に、議会に対してUSICAの早期成立を求めている。
上院でUSICAを提出した中心議員のトッド・ヤング議員(共和党、インディアナ州)は米国政治専門誌「パンチボウル」が1月25日に開催した公開イベントで、「戦没将兵追悼記念日(5月30日)までには成立させたい」との意気込みを示した。
(注)連邦政府ポータルサイト(ドケット番号:DOC-2021-0010)へのオンライン提出が可能。提出した情報は原則、全て公開されることになる。
(磯部真一)
(米国)
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