11月の米小売売上高、前月比0.3%増で4カ月連続増加も、事前予想を下回る伸び
(米国)
ニューヨーク発
2021年12月21日
米国商務省の速報(12月15日付)によると、2021年11月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.3%増の6,398億ドルと、4カ月連続の増加になったものの(添付資料表参照)、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.8%増を下回る伸びにとどまった。なお、10月の売上高は1.7%増(速報値)から1.8%増に上方修正された(2021年11月18日記事参照)。
食品・飲料、ガソリンスタンド、フードサービスなどが押し上げ要因に
業種別にみると、食品・飲料が前月比1.3%増の784億ドル、寄与度0.15ポイントと全体を最も押し上げた。次いで、ガソリンスタンドが1.7%増の549億ドル(寄与度:0.14ポイント)、フードサービスが1.0%増の737億ドル(0.12ポイント)で増加に寄与した。一方、総合小売りは1.2%減の707億ドルと減少幅が大きかった。
サプライチェーンの混乱による品不足を避けるため、小売り各社では年末商戦を前倒しする動きが進んでいる。消費が前倒しされて、2021年3月以来の伸びを示した10月からの反動による11月の伸びの縮小、あるいは、急激な物価上昇や物流混乱による供給不足が消費意欲に影響したとみられる。バンク・オブ・アメリカのエコノミスト、アディティア・バーべ氏は「より重要なのは季節的な(消費)パターンの変化だ」と指摘し、消費者が例年よりも早い時期からホリデーショッピングを開始していることが、長期化する年末商戦の消費傾向を表している、という認識を示した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙12月15日)。
また、民間調査会社コンファレンスボードが11月30日に発表した11月の消費者信頼感指数は109.5と、10月(111.6)より2.1ポイント減少し、3月(109.0)以来の低水準となった(添付資料図参照)。内訳をみると、現況指数は142.5(10月:145.5)で3.0ポイント減少し、6カ月先の景況見通しを示す期待指数も87.6(10月:89.0)で1.4ポイント減少した。
一方、米国ミシガン大学が12月10日に発表した12月の消費者信頼感指数(速報値)は70.4となり、2011年以来の低水準になった前月(67.4)から上昇した。現状指数は74.6(11月:73.6)に上昇し、期待指数も67.8(11月:63.5)と大きく上昇した。同大学によると、所得分布の下位3分の1の世帯で23.6%改善し、1980年6月(29.2%)以来最大の改善幅を記録した。一方、中間所得層と上位3分の1の世帯は、それぞれ3.8%、4.3%悪化した。ミシガン大学の消費者調査部門のチーフエコノミスト、リチャード・カーティン氏は、低所得世帯の信頼感の改善は賃金上昇への期待に基づいており、「これは賃金と物価(の上昇)スパイラルの発生を示唆し、今後数年間インフレを促進させる可能性がある」との懸念を示した(「マーケットウォッチ」12月10日)。
(樫葉さくら)
(米国)
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