欧州委、温室効果ガス55%削減目標達成のための政策パッケージ第2弾を発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年12月16日

欧州委員会は12月15日、EUの2030年の温室効果ガス削減目標である、1990年比で少なくとも55%削減を達成するための政策パッケージを発表した。パッケージには、(1)EU域内で消費されるガスを、天然ガスから水素やバイオガスなどの再生可能なガスおよび低炭素ガスに移行させるための域内ガス市場規則の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、および域内ガス市場の共通ルールを定める指令の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2021年12月16日記事参照)、(2)エネルギー部門から排出されるメタンガスの削減に関する新規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、(3)建物のエネルギー性能指令の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が含まれる。欧州委は7月14日に、同じく「欧州グリーン・ディール」を推進する政策パッケージ「Fit for 55」を発表しており(2021年7月15日記事参照)、欧州委は今回の提案をFit for 55パッケージを補完する政策と説明している。

(1)のガスに関しては、域内で消費されるガスに占める再生可能なガスまたは低炭素ガスの割合は5%に満たないとし、この割合の大幅な上昇を目指す。中でも、水素の市場拡大を主要な目的の1つに位置付ける。化石燃料である天然ガスについては、石炭・石油からの移行期のエネルギーとしての役割は認めるものの、段階的に利用を低減させるべく規制を設ける。

(2)のメタンは、EUでは53%が農業部門から、26%が廃棄物処理部門から発生するものの、今回対象となるのはメタン排出の19%を占めるエネルギー部門。具体的には石炭、石油、天然ガス産業における、メタン排出の厳格な測定基準などの導入、メタンの漏えい検知と修繕の義務化、メタンの放出や焼却の禁止などが含まれる。

(3)建物のエネルギー性能指令の改正では、欧州委が2020年10月に発表した「リノベーション・ウェーブ戦略」(2020年10月15日記事参照)で掲げた大規模改装の推進を進めるべく、建物のエネルギー性能評価の基準の域内共通化を進め、特に低性能に該当する建物について重点的に底上げを図る内容となっている。

欧州グリーン・ディールの多様な側面の政策を相次いで発表

欧州委は同じく15日に、欧州グリーン・ディールの一環として、持続可能なカーボンサイクルに関する政策文書(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)および、環境犯罪に対処するための新指令案も発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。持続可能なカーボンサイクルは、農業における炭素排出抑制を進める「カーボンファーミング」や、合成燃料、プラスチック、ゴム、化学品などの生産過程で必要となる二酸化炭素に関して、化石燃料に由来しない二酸化炭素の利用の推進などを対象としている。環境犯罪への対処は、違法な木材貿易、船舶の違法なリサイクル、川や湖などからの違法な取水といった行為を対象に、加盟国が定めるべき罰則の最低水準などを定める。

欧州委は前日の14日には、汎(はん)欧州運輸ネットワーク(TEN-T)規則の改正を中心とする交通政策のパッケージも発表している(2021年12月16日記事参照)。2022年は、欧州議会およびEU理事会(閣僚理事会)での審議が一部開始したFit for 55に加え、今回の一連の政策パッケージの検討と審議が進むことになる。

(安田啓)

(EU)

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