欧州委、グリーン・ディールの一環としてエネルギー関連政策を発表
(EU)
ブリュッセル発
2020年10月15日
欧州委員会は10月14日、2050年までの気候中立(温室効果ガスの排出実質ゼロ)を目指す「欧州グリーン・ディール」の一環として、EUのエネルギー政策に関連する政策提案や報告書を公表した。
欧州委がまず発表したのは「リノベーション・ウェーブ戦略」と呼ばれる、EU域内の既存の建物のエネルギー効率の改善を促す大規模改装推進計画だ。EUにおけるエネルギー消費の40%、温室効果ガス排出の36%が建物のエネルギー利用に由来することから、建物のエネルギー効率を上げることが2050年の気候中立目標や2030年の中間目標の達成には欠かせないとし、欧州委が今後、関連法案の提案、資金や技術協力の提供を実施することで、2030年までに3,500万棟の建物の改装を目指す。2030年の目標の達成には、毎年2,750億ユーロの追加投資が必要と試算しており、その財源として復興基金の中核政策である「復興レジリエンス・ファシリティ」(RRF)(2020年9月18日記事参照)や、投資促進策「インベストEU」(2020年1月21日記事参照)による民間投資の呼び込みの活用などを提言している。
また、欧州委は「メタン排出削減戦略」も発表。メタンは二酸化炭素に次いで気候変動に及ぼす影響が大きな温室効果ガスであることから、その削減も気候中立目標の達成に欠かせないとする。今回の戦略は、メタン排出の大部分を占めるエネルギーや農業、廃棄物の各産業を対象に、今後の法案策定の計画や行動目標を示している。焦点を置くのがメタン排出の計測と報告の強化だ。現状では加盟国や産業によって産出量算定方法が大きく異なることから、国連気候変動枠組み条約の排出量算定方法のうち最も正確なTier 3の、EU域内における幅広い利用を目指す。
欧州委はさらに、2020年度版「エネルギー同盟現状報告書」も発表した。報告書には、EUのエネルギー政策の現状分析と合わせて、全加盟国の国別の国家エネルギー・気候計画(NECP)の評価が付帯されている。NECPとは、各加盟国が提出した2030年の中間目標の達成に向けた国家計画で、同報告書は再生可能エネルギーを含む脱炭素化や、エネルギー効率性、安全保障、研究開発、競争力の観点から分析し、NECPの円滑な実施のためのガイダンスを提供している。欧州委は、加盟国が「RRFにおいて提出が求められる投資案や改革案に関して、このNECPの国別評価を気候・エネルギー分野の重要な基礎にするべきとしている。
(吉沼啓介)
(EU)
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