メルセデス・ベンツ、EV時代に向けた新計画を発表
(ドイツ)
ミュンヘン発
2021年08月03日
ドイツ自動車大手ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツは7月22日、電気自動車(BEV)時代に向けた計画を発表した。2022年までに市場投入する全セグメントでBEVを提供する。また、乗用車の設計思想となるアーキテクチャ(プラットフォーム)は2025年からはBEV向けのみとする。具体的には、(1)中・大型乗用車向けの「MB.EA」、(2)高級スポーツカー向け「AMG.EA」、(3)小型商用車とバン向けの「VAN.EA」のBEV専用アーキテクチャを2025年に導入の予定。
メルセデス・ベンツは、市場動向によっては2030年までに全新車販売をBEVにする可能性も視野に準備を進める。同社は2019年5月発表の計画「アンビション2039」で、2030年までに乗用車販売台数に占めるBEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)の割合を50%以上にする、としていた。ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」(2021年7月23・24・25日週末版)によると、同社の乗用車販売台数に占めるBEVとPHEVの割合は、2020年が7.4%、2021年上半期が10.2%だった。
同社は、2022年から2030年までに総額400億ユーロ以上をBEVの研究開発に投資する。一方、内燃機関搭載車とPHEVへの投資は、2026年に2019年比で80%減らすなど、BEV移行を明確化。国内工場の車両電動化対応(2021年3月23日記事参照)と従業員教育も進め、2020年には国内約2万人の従業員がBEVに関する教育訓練を受講した。付加価値をできる限り自社に取り込むため、BEV向け駆動技術を自社開発・生産する。この一環として、電気モーター製造のノウハウを有する英国ヤサ(YASA)を買収する。
BEVの販売台数増加により、同社は今後、約200ギガワット時以上の蓄電池が必要になるとし、パートナー企業と協力して蓄電池セル工場を全世界8カ所に新設する。「ハンデルスブラット」紙の上記記事によると、同社は既に韓国のLG Chem、SK Innovation、中国のCATL、FARASISなどと蓄電池で協力関係にある。
また同社は、BEVの航続距離向上と充電時間短縮のカギである蓄電池のエネルギー密度向上のため、米国シラナノ(SilaNano)などと次世代蓄電池の開発を行うほか、ドイツ機械製造GROBとも蓄電池製造などで協力する。全固体電池についても、他企業との研究開発を見込む。さらに、蓄電池リサイクル工場をシュトゥットガルトの西方約100キロのフランスとの国境沿いにあるクッペンハイムに建設、同工場は2023年に稼働の予定。
BEV用充電インフラも普及を図る。石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルと協力し、2025年までに欧州、中国、北米に3万カ所以上の充電施設を整備、うち1万以上は急速充電施設の予定だ。
(クラウディア・フェンデル、高塚一)
(ドイツ)
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