欧州委、半導体とデータ関連技術の官民協働アライアンス立ち上げ
(EU)
ブリュッセル発
2021年07月21日
欧州委員会は7月19日、プロセッサー・半導体技術アライアンスと、産業データ・エッジ・クラウド・アライアンスの2つの官民協働アライアンスを発足させたと発表した。欧州委は5月に発表した新産業戦略の更新版(2021年5月7日記事参照)で、EU域外からの依存を低減させるべきとして列挙した戦略的分野のうち、供給能力の不足により自動車分野の生産体制などに影響が及んでいる半導体(2021年3月17日記事参照)や、クラウドとその接続に必要な基地局やルーターなどの情報機器などのエッジ技術を挙げ、2021年第2四半期(4~6月)をめどに新アライアンスの発足を目指してきた。アライアンスは、民間企業をはじめ、公的機関や貿易団体、市民団体、研究開発機関など幅広い主体の参加を募り、EU域内デジタル産業の底上げを図るべく、ロードマップの策定など協力を図るものだ。
「デジタル・コンパス2030」に掲げる目標達成を目指す
プロセッサー・半導体技術アライアンスは、次世代型プロセッサーやマイクロチップの設計、生産能力の増強を目的とする。欧州委が2030年までの欧州デジタル化への移行実現を目指して3月に発表した「デジタル・コンパス2030」(2021年3月12日記事参照)では、次世代半導体のEU域内生産の世界シェアを現状の約10%から20%以上に引き上げる目標を掲げている。アライアンスを通じて、半導体チップの製造プロセスでの微細化技術について、現在の欧州での需要を満たす10~16ナノメートルの水準だけでなく、次世代ニーズを見越した2~5ナノメール水準まで高めることを目指す。
産業データ・エッジ・クラウド・アライアンスは、クラウド技術とエッジコンピューティング技術(注)のEU産業の地位強化を目的とする。「デジタル・コンパス2030」では、現在、EU域内企業の26%にとどまっているクラウドサービスの活用を75%まで引き上げるとしている。また、欧州委によると、エッジコンピューティングを活用して処理されるデータは現在20%程度だが、2025年には80%まで急増することが見込まれ、技術主権の確保が不可欠となっている。
いずれの分野でも今後、ドイツやフランスをはじめとしたEU加盟国が主導して、EUの国家補助ルール上、イノベーションの必要な重点産業への複数の加盟国による共同支援を可能にする「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」としての欧州委の承認を目指す。
(注)必要な一部の情報処理をユーザーや端末に近いネットワークの周辺部(エッジ)で行う技術。
(安田啓)
(EU)
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