欧州委、再エネ比率の2030年目標を40%に引き上げ
(EU)
ブリュッセル発
2021年07月20日
欧州委員会は、2030年に温室効果ガスを1990年比で少なくとも55%削減するための政策パッケージ(2021年7月15日記事参照)の一環として7月14日、エネルギー利用に関する主要な法令(再生可能エネルギー指令、エネルギー効率化指令、エネルギー課税指令)の改正案を発表した。
温室効果ガス55%削減目標に合わせエネルギー関連3指令を見直し
再生可能エネルギー(再エネ)指令の改正案では、最終エネルギー消費ベースのエネルギーミックスに占める再エネの比率の2030年目標を、現行指令上の「少なくとも32%」から、「少なくとも40%」に引き上げる提案が目玉となっている。2019年時点の同比率は19.7%で、2030年までにこれをEU全体(注)でほぼ倍増させる必要がある。各加盟国は、道路交通・鉄道・航空・海運を含む運輸、製造業、建物、冷暖房など分野別に設定された目標値の達成を各業界に義務付けることが求められる。
例えば、運輸セクターでは、2030年までに単位輸送量当たりの温室効果ガス排出量を少なくとも13%削減しなければならない。製造業に対しては、各加盟国は努力目標に当たる「指示的目標(indicative target)」として再エネ使用を毎年1.1%ポイント増加させるよう求める。その他、欧州委は再エネ燃料および低炭素水素など低炭素燃料に対する認証制度をEUレベルで導入することを提案。現状ではこれらの燃料に関する認証制度は、加盟国ごとに任意で運用されており、EU全体で共通の基準に基づいた認証制度を適用することで、エネルギーのトレーサビリティを向上させる狙いがある。
エネルギー効率化指令の改正案では、EU全体でのエネルギー効率を、2020年時点でのEUのベースライン予測値に対して2030年までに少なくとも9%改善するという基本方針が設定されている。これは、最終エネルギー消費ベースでは36%の削減に相当する。改正指令では、欧州委のエネルギーシステム統合戦略(2020年7月10日記事参照)などに掲げる「エネルギー効率性第一」の原則を実践すべく、加盟国が電力やガスなどのエネルギー部門や公共部門に対し設定する義務などを見直している。
エネルギー課税指令では、燃料や電力への加盟国の最低税率の水準や課税対象を定めたている。現行指令は2003年に施行され、欧州委のパオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)によれば、「現在のグリーン目標からみて完全に時代遅れ」となっている。改正案では、再エネ燃料・電力など環境性能の優れたエネルギーの使用および再エネ分野への投資にインセンティブを与える税体系への転換を目指すとしている。さらに、現行指令では対象外となっているジェット燃料に用いられるケロシンや、船舶の動力となる重油も課税対象に含める。
(注)再エネ指令案における再エネ比率「少なくとも40%」、エネルギー効率化指令案における「エネルギー効率9%改善」はいずれも、加盟国ごとではなくEU全体での目標。
(安田啓)
(EU)
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