米USTR、初のUSMCA自由貿易委員会を主催
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2021年05月20日
米国通商代表部(USTR)は5月17~18日に、2020年7月1日に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)において初となる自由貿易委員会(FTC)を主催した。FTCは協定の管理・運用・勧告などを行う閣僚レベルの枠組みで、協定発効から1年以内に最初の会合を開催することになっていた。米国からはキャサリン・タイUSTR代表、メキシコからはタティアナ・クルティエール経済相、カナダからメアリー・エング中小企業・輸出振興・国際貿易相が参加した。
3カ国の閣僚は共同声明で、「加盟国は通商政策が広範で公平な成長を促し、技術革新を促進し、共有する環境を守り、全ての人々の生活に良い影響を与えるものであるべきとの点を認識している。それを実現すべく、米国、メキシコ、カナダはUSMCAが続く限り、協定の内容と高い基準を完全に執行することを再び約束する」と、今後の運用に関する意気込みを示した。
FTCにおいて3閣僚は、協定の各分野を所管する小委員会(注)から報告を受け、今後の運用面での改善のための提言を行ったとしている。USTRはこのほか、3カ国で、USMCAにおける労働と環境のルールについて未来志向の議論を行ったとしている。労働に関しては、USMCAが結社の自由と団体交渉権を含めた労働者の権利保護のための基準を引き上げている点を指摘した上で、強制労働により生産された物品の輸入を禁止するというUSMCAの義務を確実にしていくと強調した。労働分野については既に、3カ国の労働組合がメキシコの企業トリドネックスでの労働権侵害について提訴を発表している(2021年5月12日記事参照)ほか、USTRが同じくメキシコのゼネラルモーターズ(GM)工場での労働権侵害の疑いについて事実確認の要請を行う(2021年5月13日記事、5月14日記事参照)など、USMCA活用の事例が出てきている。
3カ国は環境に関しても、USMCAでの義務を完全に履行するとともに、特に、野生生物の違法取引や違法な伐採およびそれに伴う貿易の分野において、法執行に関する協力を増やしていくとしている。
そのほかの具体的な決定事項としては、紛争解決手続きにおける手続き上のルールと行動規範について、スペイン語版とフランス語版を承認した。
3カ国は今後について、新型コロナウイルスによる経済的打撃を最も受けている中小企業や地方のコミュニティに焦点を当て、USMCAの活用を議論していくとしている。その上で、10月13~14日にテキサス州のサンアントニオ市で、中小企業小委員会が初の「USMCA中小企業対話」を開催すると発表した。また、今回焦点を当てた分野に関する進捗を確認すべく、年末までに次官級の会合を開催するとしている。
(注)USTRのプレスリリースによると、今回のFTCに参加した小委員会は次のとおり。原産地規則、繊維・繊維製品貿易問題、貿易円滑化、衛生植物検疫措置、貿易の技術的障害、輸送サービス、金融サービス、知的財産権、国有企業・指定独占企業、中小企業問題、競争力、良き規制慣行。
(磯部真一)
(米国、メキシコ、カナダ)
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