米国政府からのGMシラオ工場の労働権侵害の確認要請に対し、調査を開始

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2021年05月14日

ゼネラルモーターズ(GM)のグアナファト州シラオ工場での労働権侵害をめぐる、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRLM)」に基づく米国通商代表部(USTR)からの事実確認要請(2021年5月13日記事参照)に対し、メキシコ政府は5月12日、米国政府から正式な通知を受けたことを明らかにし、本件についての調査を開始することを発表した。USTRの要請に肯定的に応える場合、全ての調査結果を文書で米国側と共有し、是正措置の提案を行うとしている(経済省・労働社会保障省共同プレスリリース5月12日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

GMのシラオ工場の労働権侵害とは、2019年5月1日付官報で公布された連邦労働法の改正(2019年5月7日記事参照)、およびUSMCAの関連規定(付属書23-A)に基づき、同工場の労働者が加入する労働組合(通称「ミゲル・トゥルヒージョ・ロペス労働組合」)が雇用主(GMメキシコ)との間で締結している労働協約の「適法化」プロセス(2019年8月5日記事参照)における、労働者による労働協約の承認投票の実施過程において、法規に違反する行為がみられ、安全性や確実性が保障される民主的プロセスに基づく投票が行われなかった疑いがあるという問題だ。

同問題については、既に労働社会保障省が調査を開始しており、USTRからの通知に先立つ2021年5月11日には、4月20~21日に行われた投票をやり直すよう、ミゲル・トゥルヒージョ・ロペス労働組合に命じている。また、投票のやり直しに関わらず、労働社会保障省の法務局および労働査察局の調査結果として違法性が確認された場合は、しかるべき制裁を科すとしている(労働社会保障省プレスリリース5月11日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。従って、RRLMに基づくパネルが設置される前に、メキシコ政府による権利侵害の是正が行われる可能性が高い。

今後の労働協約の適法化プロセスに注意

連邦労働法の改正に基づき、雇用主と労働組合の間で締結されている労働協約は、2023年5月1日までに適法化される必要があるが、2021年5月12日時点で同プロセスを終えたのは887の協約にすぎない。メキシコ全国では50万を超える労働協約が登録されているといわれており、適法化プロセスを今後実施する事業所も多い。適法化プロセスにおいて違法性が確認された場合、国内法による制裁に加え、USMCAに基づく制裁の対象となるリスクもあるため、投票プロセスは組合が主体となって行うものとはいえ、経営者としても細心の注意を払う必要がある。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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