IMF、2021年の世界経済成長率の見通しを6.0%に引き上げ

(世界)

国際経済課

2021年04月07日

IMFは4月6日、「世界経済見通し(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。2021年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を6.0%、2022年を4.4%とした(添付資料表参照)。前回(2021年1月)の見通しと比較すると、2021年を0.5ポイント、2022年を0.2ポイント上方に修正した(2021年1月27日記事参照)。世界経済成長率が6%台に達するのは、今回公開されたデータベースでさかのぼることができる1980年以降で初めて。

見通しについては、(1)パンデミック、(2)政策、(3)金融情勢と商品価格、および(4)活動制限に対する国の適応能力、に依存すると指摘。新型コロナウイルスのワクチンが広く普及するタイミングを先進国と一部の新興・途上国は2021年夏、多くの国は2022年の後半までと仮定した。政策については、バイデン政権による1兆9,000億ドル規模の財政パッケージが米国の経済成長を強力に後押しし、主要な貿易相手国にもプラスに波及すると想定。また、金融政策は緩和的で、(経済)回復が定着するにつれて徐々に引き締められること、原油、金属、食料のいずれの価格も2021年に上昇することなどを前提にした。

パンデミックの見通しが不確実なため、リスクバランスを定量化することは困難と言及。主な下振れリスクとして、パンデミックの再燃、より厳しい金融環境、供給力の低下といった「後遺症」の拡大、激化する社会不安、自然災害の頻度の増加、地政学・貿易・技術リスクを挙げた。他方で、上振れリスクとして、ワクチン製造・接種の促進、財政支援による想定以上に大きな効果、(経済)回復後半局面での出口政策に関する国際協調などを挙げた。

上記のリスク要因のうち、変異株、ワクチンの有効性と接種スピードによるパンデミックに関する不確実性について試算。ワクチン接種が10%早まることなどを想定した上振れシナリオの場合、2021年の世界の経済成長率は、同想定がない場合(ベースライン)と比べて0.35ポイント、2022年は0.88ポイント上昇する。国・地域別に上昇幅をみると、先進国(それぞれ0.48ポイント、1.06ポイント)が新興・途上国(0.25ポイント、0.74ポイント)を上回る。より多くの累積貯蓄と繰り延べ需要が発生している先進国が回復を牽引すると説明した。

他方で、先進国では約6カ月、新興・途上国で9カ月、集団免疫への到達が遅れることを想定した下振れシナリオの場合、2021年の世界の経済成長率はベースライン比で1.53ポイント、2022年は1.02ポイント低下する。国・地域別では、2021年は先進国、新興・途上国ともに落ち込み幅は同程度(それぞれ1.62ポイント減、1.46ポイント減)だが、脆弱(ぜいじゃく)なビジネスにとって厳しい金融環境により、2022年の新興・途上国の落ち込み(1.34ポイント減)が先進国(0.6ポイント減)よりも大きくなると解説した。

(朝倉啓介)

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