米政府債務は2031年度に過去最大を更新、2051年度には倍増、議会予算局が試算
(米国)
ニューヨーク発
2021年03月09日
米国議会予算局(CBO)は3月4日、長期財政見通しを公表し、その中で2031年度に政府債務残高はGDP比107%と過去最大を更新、その後も膨張を続けて2051年度には同202%と、2021年度(同102%)からほぼ倍増する見込みと試算した(添付資料図1参照)。新型コロナウイルス感染拡大に伴う度重なる経済対策で足元の財政状況が悪化していることに加えて、高齢化による社会保障の負担増や利払い費が長期的に財政を悪化させると予想している。なお、3月6日に議会上院で可決された1兆9,000億ドル規模の経済対策(2021年2月8日記事参照)の影響は試算には反映されていない。
CBOは政府収支に関する見通しを定期的に作成する義務を負っており、今回の報告書は債務や収入・支出に関して今後30年程度の長期見通しを示すもの。関連資料として10年程度の中長期財政見通し(2021年2月15日記事参照)と経済見通し(2021年2月5日記事参照)が公表されており、本報告書の足元のデータはこれらに基づいている。
報告書では、新型コロナウイルス感染拡大が収束するという前提の下、財政赤字は2021年度にGDP比で10.3%と過去2番目の大きさに達した後、しばらく減少するが、2020年代後半には再び悪化していくと試算している(添付資料図2参照)。結果として、債務残高は2021年度にGDP比102%となった後、2031年度に同107%に達して過去最大を更新、その後も財政赤字とともに悪化を続け、2051年度には同202%になると見込まれる。
こうした財政悪化の主要因の1つには、人口の高齢化による支出増加がある。メディケア(注1)やメディケイド(注2)などのヘルスケアプログラム費用は2030年ごろから高齢化の進展に伴って増加し、2051年にはGDP比で9.4%に達するとされている。また、もう1つの要因として、利払い費の急増が挙げられる。しばらくは低金利の状況が続くという想定から、今後数年間は支出が減少する。しかし、2026年から2031年にかけて10年債の金利が3.0%になるという前提の下、2020年代中ごろから利払い費は急激に悪化するとしており、これが財政赤字や債務残高を増加させ、さらなる利払い費の増加を招く悪循環を生じさせる。結果として、2051年には利払いはGDP比で8.6%にまで達すると試算している(添付資料図3参照)。
ジャネット・イエレン財務長官は1月の議会公聴会で、注目すべき指標として利子負担を挙げ、税収を利払いに充てざるを得なくなれば、他の必要なサービスや支出の削減につながるとの懸念を指摘している(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版3月4日)。
(注1)65歳以上の高齢者および障害者を対象に連邦政府が運営する公的医療保険制度
(注2)低所得者を対象とした連邦政府と州政府が運営する公的医療保険制度
(宮野慶太)
(米国)
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