新エネルギーの普及に向けて、揚水発電所を大幅に増設

(中国)

中国北アジア課

2021年03月26日

国営の電力送配電会社である国家電網(注1)は3月19日、第14次5カ年規画(2021~2025年)中に、揚水発電(注2)の発電設備容量(注3)を新たに合計2,000万キロワット(kW)以上増やすことを目標とし、揚水発電所を大幅に増設すると発表した。揚水発電は、電力需要の変動に合わせて常に発電量を調整できるため、発電量の安定しない太陽光や風力といった新エネルギー発電と組み合わせて使うことで、安定的な送電を行うことができる。国家電網が既に建設済みの揚水発電所は22基、総発電設備容量は6,229万kWとなっている。

2020年9月の国連総会において、習近平国家主席が2060年までに、二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すと表明。2021年3月5日の第13期全国人民代表大会(全人代)第4回会議で李克強首相が発表した政府活動報告では、第14次5カ年規画中の数値目標として、単位GDP当たりのCO2排出量を5年間で18%引き下げるとしている(2021年3月10日記事参照)。目標達成のため、太陽光や風力エネルギーといった新エネルギー発電を増やしていく方針だ。そこで、揚水発電の利用増も予想される。既に揚水発電所の増設に向けた取り組みは開始されており、日系企業も参入している。2021年2月には東芝エネルギーシステムズが、同社の中国グループ会社が国家電網の子会社である国網新網から、浙江省に建設予定の浙江寧海揚水発電所向けに水力発電設備を受注したと発表した。

カーボンニュートラル実現を目指す機運が世界的に高まる中、中国外でも、新エネルギーとともに揚水発電への注目が高まっている。2020年11月には、国際水力発電協会(IHA)が米国のエネルギー省とともに、11カ国および60を超える関連団体(注4)と揚水発電に関する国際フォーラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを立ち上げた。同フォーラムでは、技術やマーケットに関する障壁を乗り越えるため、政策提言や意見交換を行うという。

(注1)発電・送配電を一元的に行ってきた国有企業の中国国家電力を、2002年に発電部門と送配電部門に分割し、送配電に関しては国家電網と中国南方電網の2社が設立された。国家電網は、26省、国土の88%の送配電ネットワークを管轄する。

(注2)揚水発電は、夜間など電気の使用量が少ない時間帯に余剰電力で揚水ポンプを動かし、水を低いところから高いところにくみ上げ、日中など電気が必要な時間帯にくみ上げておいた水を落として、水車を回して発電する方式。

(注3)発電設備における最大出力容量を示す。100万kWの発電設備容量はおよそ原子力発電所1基分とされる。

(注4)参加国は、米国、オーストリア、ブラジル、エストニア、ギリシャ、インド、インドネシア、イスラエル、モロッコ、ノルウェー、スイス。関連団体には、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)といった国際金融機関やNPO、電力事業者などが含まれる。

(江田真由美)

(中国)

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