EU研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」を立ち上げ
(EU)
ブリュッセル発
2021年02月04日
EUの2021~2027年の研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」の立ち上げを記念するオンラインイベントが2月3日、EU理事会(閣僚理事会)の議長国ポルトガルの主催で開催された。
ホライズン・ヨーロッパは2020年9月29日にEU理事会が設立規則案に大筋合意し(2020年10月1日記事参照)、12月10日にEU理事会と欧州議会の間で、予算額を含め政治合意に達している。設立規則案はEU理事会と欧州議会で承認プロセスが完了していないが、承認されれば1月1日にさかのぼって予算の執行が認められ、実質的には運用に向けた準備が整ったことがイベントで宣言された。
予算規模は955億ユーロに拡大
ホライズン・ヨーロッパの総予算規模は、名目額で955億ユーロ(2018年基準で849億ユーロ)となった。2020年7月21日のEU首脳会議での合意809億ユーロに加え、欧州議会の要求で40億ユーロ(いずれも2018年基準額)が増額された(2020年11月11日記事参照)。欧州委員会によると、英国を除いた27カ国ベースかつ物価変動を考慮した金額で比較した場合、前回のプログラム「ホライズン2020」(2014~2020年)に比べて30%の増強となる。
立ち上げイベントで基調講演した欧州委員会のマリヤ・ガブリエル委員(イノベーション・青少年担当)は「ホライズン・ヨーロッパは現在の(新型コロナウイルスの)パンデミックからの復興を支え、グリーン・デジタルと健康、公平なEUの将来を実現するためのカギとなるツールであり、世界でも最も野心的な研究開発支援プログラムだ」と、その意義を説明した。
ホライズン・ヨーロッパの予算は、(1)エクセレント・サイエンス、(2)グローバルな課題と産業競争力、(3)イノベーティブな欧州という3つの柱に振り分けられる。さらに、重点分野として「EUミッション」と名付けられた次の5つのテーマが設定されている。
- がんの克服
- 社会の変革を含む気候変動への適応
- 海洋・海岸・内陸水における健康の回復
- 気候中立を達成するスマートシティー
- 健全な土壌と食糧
これらの分野に即した「ミッション志向型研究」は、とりわけ第2の柱「グローバルな課題と産業競争力」の下で重点的に予算が配分されるほか、他のEU予算も活用した重層的な支援が予定されている。例えば「がんの克服」については、欧州委は2月3日に政策文書「がん克服計画」を発表し、ホライズン・ヨーロッパのほか、新たに設置されるEUの保健衛生政策「EU・フォー・ヘルス」なども活用して多面的に取り組むとしている。
(安田啓)
(EU)
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