ブレグジット移行期間終了から1カ月、物流の混乱が顕著に
(英国、EU)
ロンドン発
2021年02月08日
英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間が2020年12月31日に終了してから1カ月余りが経過した。物流の混乱などが目立っている。
英国・グレートブリテン島から北アイルランドへの物流では、通関手続きにより、野菜や冷蔵肉など生鮮食品の出荷について大幅な遅延が発生している。物流の混乱を避け、同地域向けに一部商品の販売を停止、もしくは今後停止を検討する小売事業者もみられており、北アイルランドでこれらの商品の不足が頻発している。主要スーパーマーケット6社は、長期的な解決策なしに猶予期間(2020年1月7日記事参照)が終了すれば、食品供給にさらなる混乱が発生するため、緊急な対応が必要だと政府に警告した、と複数メディアが報じている(「BBC」1月12日など)。
こうした状況を踏まえ、マイケル・ゴーブ内閣府担当相は2月2日、欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ副委員長に書簡を送り、スーパーマーケットの商品、冷蔵肉製品、宅配貨物、医薬品をグレートブリテン島から北アイルランドに移送する際の手続きの緩和措置を、少なくとも2023年1月まで延長することを要請した。
大陸側との物流では、漁業関係者への影響が目立つ。大量の書類や貨物検品などの煩雑さから輸出の遅延が深刻化し、損失が生じている。スコットランドの水産物輸出業者は1月18日、ロンドン中心部の英国議会と首相官邸の周辺にトラックを乗り入れ、抗議デモを実施した。業界の混乱と厳しい非難を受け、ボリス・ジョンソン首相は翌19日、漁業関係者向けに2,300万ポンド(約32億8,900万円、1ポンド=約143円)の基金を立ち上げる意向を表明した。
英国食肉加工業者協会(bmpa)も1月18日、「EUのスーパーマーケットに要求どおり商品を配達できなければ、彼らは調達先をEUの加工業者に切り替え、われわれは顧客を失う」と警鐘を鳴らした。
日系企業も新たな通関手続きなどに苦慮
在英、在欧の日系企業も対応に追われている。英国に生産拠点を持つ日系機械メーカーは、12月末にようやく明らかになった英EU通商・協力協定の品目別原産地規則や原産地手続き(2020年12月28日記事参照)の確認を続ける。日本から英国経由でEUに出荷する製品や、EU経由で英国に出荷する製品を持つ別の機械メーカーは、移行期間終了後も関税コスト削減のための対応を急いでいる。新型コロナウイルス感染症に起因する海上輸送や港の混乱(2020年12月11日記事参照)も続いており、モノの移動に関して、日系企業が苦慮する状況はしばらく収まりそうもない(注)。
(注)日英EU間取引における通関手続きの変更点や英EU、日EU、日英各協定の内容についてはブレグジット特集ページや日EU/日英経済連携協定(EPA)特集ページ参照。
(宮口祐貴)
(英国、EU)
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