移行期間終了後もグレートブリテン島と北アイルランドの物品移送に多数の暫定措置
(英国、EU)
ロンドン発
2021年01月07日
英国がEU単一市場と関税同盟から完全離脱した(2021年1月4日記事参照)ものの、北アイルランドをめぐっては、暫定的な取り決め(2020年12月23日記事参照)や土壇場での猶予期間導入などが数多くみられる。
歳入関税庁(HMRC)は12月31日、宅配事業者や郵便事業会社ロイヤル・メールなどがグレートブリテン島から北アイルランドに移送する宅配貨物について、1月1日~3月31日の間、北アイルランドの事業者の搬入時の税関申告を最大3カ月間繰り延べ可能とする措置を発表した(注1)。1月以降の規制が不透明なことを背景に、英国の大手小売店などが北アイルランド向けの宅配貨物発送を停止したり、同地域からの注文を取り消したりするなどして、混乱が広がっていたことが背景にある。
繰り延べ後の申告方法は後日公表されるが、事業者はトレーダーサポートサービス(TSS)(2020年11月20日記事参照)に登録するとともにEORI番号を取得し、宅配貨物の受領日と請求書を保管する必要がある。関税支払いが必要となるリスクを避けるために、「英国トレーダー・スキーム」(2020年12月21日記事参照)への申請も勧めている。なお、4月1日以降の詳細も、後日公開としている。
食品分野などでも暫定的な措置や猶予期間の導入が目立つ。環境・食糧・農村地域省は12月14日、特定の肉製品のグレートブリテン島からEUおよび北アイルランドへの輸出・移送が制限または許可されていないことに対する救済措置として、一部の食品(鶏肉以外の冷蔵ひき肉・ソーセージなど)については、6カ月間は北アイルランドへの移送を可能とする特例措置を公表。その後の恒久的な措置はまだ決まっていない。
ほかにも、グレートブリテン島から北アイルランドへの混合食品(注2)、植物および植物製品、非動物性由来の高リスク食品および飼料の移送について、スーパーマーケットやそのサプライヤーなど一部事業者を対象に、一定の条件の下で輸出衛生証明書(EHC)、植物検疫証明書などの添付を3カ月間免除する措置も公表されている。
これらの猶予期間や暫定的な取り決めが期限を迎える前には、再び混乱が生じる可能性もある。事業者の負担が少ない恒久的な措置を英国とEUが編み出せるか、英国のEU離脱(ブレグジット)の移行期間終了後も調整は続く。
(注1)135ポンド(約1万8,900円、1ポンド=約140円)未満の宅配貨物を受け取る北アイルランドの事業者、金額にかかわらず宅配貨物を受領する北アイルランド居住者(個人)、貨物を発送するグレートブリテン島居住者(個人)は、申告などの追加手続き不要。宅配貨物を発送するグレートブリテン島の事業者も、酒類・たばこ・規制品目などを除き、新たな申告は必要ない。
(注2)人が消費する目的で生産される、動物由来加工製品を使用し、主原料の一部に植物性製品も使用されているもの。
(宮口祐貴)
(英国、EU)
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