トランプ米政権、複数の中国企業を輸出管理と投資禁止対象に相次ぎ追加
(米国、中国)
ニューヨーク発
2021年01月20日
トランプ米政権は1月14日、複数の中国企業を輸出管理と投資禁止対象に追加し、即日有効となっている。正式には15日に官報で公示された。輸出管理については、商務省が輸出管理規則(EAR)に基づき、国有企業の中国海洋石油集団(CNOOC)をエンティティー・リスト(EL)に、北京天驕航空産業投資会社(スカイリゾン)を軍事エンドユーザー・リスト(MEUリスト)に追加。投資禁止に関しては、国防総省が1999年国防授権法の第1237条に基づいてスマートフォン・IT機器大手の小米科技(シャオミ)など9社を「共産主義中国の軍事企業」に認定した。この認定を受けた企業は、米国人(注1)による証券投資禁止の対象となる(2020年11月16日記事参照)。
商務省はプレスリリースで今回の判断に関し、CNOOCについては南シナ海を取り巻く周辺国への中国政府による威圧的行為に加担していること、スカイリゾンについては軍用機向けエンジンの開発・生産などに関与していることを理由に挙げた。ELに追加したCNOOCについては、商務省産業安全保障局(BIS)が指定した以外の米国製品(物品、ソフトウエア、技術)の輸出・再輸出・国内移送(以下、輸出など)が原則不許可(presumption of denial)となっている(注2)。MEUリストに追加されたスカイリゾンについては、BISが指定した軍事転用の恐れがある米国製品の輸出などが原則不許可(presumption of denial)となる(2020年12月25日記事参照)。
国防総省は1999年国防授権法の第1237条に基づき、2020年6月以降、3回に分けて「共産主義中国の軍事企業」を計35社認定しているが、今回9社を追加したことで計44社となる。この認定を受けた企業については、2020年11月12日に発表された大統領令に基づき、1月11日以降、米国人による証券投資が禁止されているとともに、既に保有している証券などは2021年11月11日までに売却することが求められている(注3)。さらに、商務省は2020年12月のMEUリスト発表時に「共産主義中国の軍事企業」の認定を受けた事業体についても、軍事転用の恐れがある米国製品の輸出などには注意すべきとしている。
今回認定された9社の中には、中国国有の航空機大手の中国商用飛機(COMAC)も含まれている。米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によると、同社が現在注力するC919型機の生産の部品など調達先の約5分の3は米企業となっている。米メディアの中には、今回のトランプ政権の措置が同社を米ボーイングや欧州エアバスと比肩する企業に育成しようとする中国政府の野心を脅かす可能性があると指摘するものもある(「ブルームバーグ」1月15日)。
(注1)米国市民、永住者、米国の法律または米国内の管轄権に基づいて組織された事業体(外国支社も含む)、または米国内にいる個人が含まれる。
(注2)BISは1月15日付官報で、HSコードで指定した一部原油など製品、またはEAR上のカントリーグループのA:1に記載された国籍の事業体との合弁事業(南シナ海以外)を継続する上で必要な製品については輸出許可を求める対象に含めないとしている。
(注3)本規制については財務省がウェブページで、ガイダンスやよくある質問集などを公開している。
(磯部真一)
(米国、中国)
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